英国が見すえるコロナ後の観光振興、業界連携で地方分散-戴冠式も追い風に

  • 2023年2月13日

日本でも地方分散や業界連携に照準

 日本市場における方針では、グローバルの戦略に沿って地方分散や旅行業界とのパートナーシップなどを重視。地方分散についてはイェーツ氏も「日本では湖水地方も人気だが、さらに新しい地域もご紹介していきたい」と意欲を表明。今回の視察旅行でもスコットランドの各地や、湖水地方のなかでも新たな地域の開拓を盛り込んだ。また昨年10月に実施した視察旅行でもヨークなどを訪問したという。

日本からは旅行会社7社とメディア1社が参加。湖水地方では英国湖水地方ジャパンフォーラムとの懇親会も実施した

 またパートナーシップについては、ガラパゴスとも評される日本市場においてローカライズの要と期待。イェーツ氏は「我々がキャンペーンを通して需要を喚起し旅行会社がそれを予約に結びつける、そうした流れを目指している」と語った。

戴冠式や食の魅力に注目も

商談会の開幕に際し挨拶したVB会長のニック・デ・ボア氏。昨年のエリザベス女王の即位70周年、今年の戴冠式、音楽祭ユーロビジョン・ソング・コンテストのリバプールでの開催などを例示し、「英国を販売するのにこれ以上の好機はない」と語りかけた

 具体的な活動では、2月末から3月はじめにかけて恒例の商談会「Explorer GB」を今年はオンラインで開催。また、5月に予定されるチャールズ3世の戴冠式(コロネーション)による露出増に合わせた需要喚起や、旅行会社や航空会社だけでなく他業界で英国と関わる企業などとのコラボレーションも進める方針で、これまでにない新しい施策にも積極的に目を向けていく。

 VB日本代表の久木智子氏は、取り組みたいテーマの一例として不本意なイメージを持たれがちな食事体験が実際には十分に競争力があるレベルであることや、「発祥の地」としての鉄道などを例示。また、旅行業界とのコラボレーション事例では、VBが昨年にグローバルで募集したDMC/ツアーオペレーター向けの助成制度に日本のオペレーターが選定される見通し。久木氏によると春夏のシーズンに向けた需要喚起を目指しており、航空会社や現地側とも連携して「コロナ後の初めての海外旅行先として英国を選んでいただけるキャンペーン」を実施したいという。

「人手不足」問題の見通しは

旅行・観光産業における人手不足は世界中で大きな問題となっている

 英国ではインバウンド需要の回復とともにコロナ禍での人員削減などによる人手不足が課題となっており、昨夏には多くのフライトが遅延・欠航するなど混乱も見られたところ。

 これについてイェーツ氏は「インフレや燃料価格の高騰、それによる高い賃金への要望が観光産業での人材確保を難しくしている」と分析。そのうえで「重要なのは観光が多くの機会に満ちた素晴らしい業界であると伝えること」であるとし、現在は業界と協力して若者の関心の喚起や業界関係者の離職防止、OB/OGの活用支援などの活動も開始していることを説明した。

 加えてオフシーズンの需要喚起も、期間限定雇用の通年化に繋がると期待。そして昨年のような混乱は、病欠による影響などコロナ禍特有の要因が大きかったこともあり「今年も繰り返されることはないと思っている」という。