人的資本経営の推進、調査をいかに経営施策に落とし込むかが重要-JTBビジネスソリューションEXPO2022

  • 2022年12月21日

人的資本経営を推進して企業価値を向上
情報開示で効果的な採用活動を

「人的資本可視化指針」をどう活用?4つの観点で項目を仕分け

人的資本の情報開示の全体像を解説

 続いて、セッションでは小林氏が「人的資本可視化指針」について解説した。指針では開示項目の例や事例などは公表されているが、実際に何に取り組み、どう開示するかは「各企業が経営戦略に沿って独自に判断すべき」としている。このため担当者からは、具体的にどう進めばいいのかわからないという戸惑う声が多く上がっているという。


 小林氏はまず、指針では開示項目の例として、「育成」「エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス/倫理」のテーマで計19項目が示されていることを説明。これらは「会社の価値向上」と「リスクマネジメント」の2つの観点で仕分けできるとし、その上で「独自性」と「比較可能性」の2つの観点もあることを解説した。開示する項目を選ぶ際は、企業ならではの独自性のある取り組みや指標、目標を開示するとともに、他社との比較可能性の観点から開示が期待されている項目についてもバランスよく入れ込む必要があるという。

 小林氏は開示について「4つの観点を同時に感じながら、何をどう開示していくかを考えなければならず、非常に難しい」とコメント。このため、すべてを整えて情報を開示しようとするとなかなか動き出せないとし、「できているところからやり、進めながらブラッシュアップしていく、ステップバイステップで進めることが重要」と話した。

目的は「開示」ではなく「企業価値の向上」

上山氏

 セッションでは上山氏が「人的資本開示&経営を適切に推進するポイント」について解説した。小林氏は「推進に当たって陥りやすいこと」として、投資家や同業他社の目を気にするあまり、数値化して開示する方法に注目が集まっている現状を指摘。「数値化やレポートでなく、どう人へ投資し企業価値を向上していくかが重要。目的を見失わないように」とアドバイスをした。

 さらに、人的投資にはコストがかかるため、トップや経営陣の理解が進まないと形骸化してしまうこと、社員への共感がないと反発を招くことを説明し、経営陣やキーマンと対話で合意形成しながら開示を進めるとともに、社員にも目的や意義を説明し理解してもらうことが重要であるとした。

 また、情報開示を進めるにあたっては、まずは人的資本経営の推進・実践が必要であるとし、企業の特性をいかして人的投資計画を策定し、計画・施策を実行することを提案。また、同時にAs-Is/To-Beフレームワークで現状と理想の状態を明らかにしてそのギャップを把握するため、サーベイや社内人的データの集計・調査をできるようにしておく必要があるとし、「この両輪を同時並行でやりつつ、定性・定量情報を活用し、外部にアピールするというのが流れ」と話した。