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人的資本経営の推進、調査をいかに経営施策に落とし込むかが重要-JTBビジネスソリューションEXPO2022

  • 2022年12月21日

人的資本経営を推進して企業価値を向上
情報開示で効果的な採用活動を



 JTBはこのほど、法人向けイベント「JTBビジネスソリューションEXPO2022」をオンライン形式で初開催した。JTBグループとしては最大規模のイベントで、「人をつなぐ、組織をつなぐ、社会をつなぐ。その先のサステナブルな未来へ」をテーマに実施。基調講演とパネルディスカッション、「営業・マーケティング戦略」「組織・人材戦略」「広報・経営戦略」の3つの観点による12のテーマセッションを開催した。本記事では「組織・人材戦略」のテーマセッションより「人的資本を最大限に活かす組織創り!~情報開示のあり方を考える~」をお届けする。

なぜ今「人的資本」を重視するのか

小林氏

 セッションではソーシャルキャピタルマネジメント代表取締役社長で、JTBコミュニケーションデザインのパートナーコンサルタントを務める小林博之氏と、JTBビジネスソリューション事業本部事業推進チーム事業推進担当部長の上山毅が登壇。人的資本の情報開示について議論した。

 まずは小林氏が人的資本の情報開示、つまり人の持つ能力などを「資本」と捉え、数値化して情報を開示することがなぜ重要なのかを解説した。人的資本については、岸田文雄内閣総理大臣が2021年12月の施政方針演説で「人的投資の見える化を図るため、非財務情報開示を推進する」ことを表明。22年2月から内閣官房の非財務情報可視化研究会が定期開催されており、5月に「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」がまとめられた。8月末には「人的資本可視化指針」が発表され、開示内容などの指針が示されている。さらに政府は23年度から、企業に人的資本情報の開示を義務付ける方針だ。

 小林氏によれば、こうした人的資本が注目を集める裏には「人的資本にしっかり投資している会社は企業価値を作っていけているが、投資が不十分な会社は十分な価値経営ができていない」という考え方があるという。また、同氏は近年「競争優位の源泉や持続的な企業価値向上の推進力は無形資産にある」との考えがあり、人的資本への投資はその中核であることを説明。多くの投資家が人的資本に関する経営者からの説明を期待しているという。

 同氏によれば、日本企業における無形資産の占める割合は時価総額の30%程度。一方で米国は時価総額の90%を占めており、日本における無形資産の評価は低いのが現状だ。これを踏まえ、小林氏は「日本企業が適正評価され、もっと価値を高める経営をするためには人材に投資しなければならない」と話し、人的資本の価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値の向上につなげる「人的資本経営」の必要性を強調した。その上で「人的資本経営をしっかりし、その状態を可視化する。経営と可視化を車の両輪のようにしっかり回すことを進めてほしい」と訴えた。

 その上で小林氏は、人材資本の可視化の前提としての経営戦略・人材戦略について説明。ビジネスモデルや経営戦略を明確にし、経営戦略にあった人材像を特定し、人材を獲得・育成する方策を実施し、成果をモニタリングする指標や目標を設定する一連の流れが重要であるとした。