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文化観光の可能性、インバウンド観光振興に向けて-第1回クールジャパン データ&デジマケまつりより

  • 2022年12月8日

デジタルを駆使したデータの利活用

蔵持氏

 文化観光の意義を明確に示すためにも、文化観光においてもデジタルを活用したデータの利活用が欠かせないとの指摘もなされた。蔵持氏は「最初は頑張って予算を獲得して取り組みを始めても、次第に流れ作業の繰り返しになってしまいがち。効果を検証し次につなげ、中身を良くしていく流れが大切だ。有形無形の文化財がどれだけ人の誘致に貢献して周りにどう影響を及ぼしたかデータを取って成果を検証し次につなげていくことが重要だ」と述べた。

 飛田氏は文化財を守る地域側の視点に立って文化観光の効果の見える化を重視すべきとした。「文化財の価値を外部が評価することで、地域の人々にとっても身近にある文化財が守るべき価値がある地域の大切な資源だという意識が生まれ、保存と活用の機運も高まる。その好循環を作っていくことが望ましい形だ」と見ている。

 文化観光はピンポイントの訴求が必要だとしたのは高橋氏。「興味関心がある人をピンポイントで爆撃する。そうしなければ価値を認めてくれる人に届かない。たとえば山ガール、カメラ女子などセグメント分けして、そこにめがけて矢を放つ。本当に関心がある人に情報を届ける。そのために必要になるのがデータだ」とする。

文化観光のポテンシャルを拡大するアイデア

 文化観光のポテンシャルについては各参加者からその可能性を拡大するアイデアについて意見が相次いだ。蔵持氏は「日本は外向きな英語の情報発信がないという指摘を外国人から受けることが多い」という。たとえば100%地産地消にこだわり、サステナブルな姿勢を打ち出しているレストランがあっても、往々にしてそうした情報は英語の検索には引っかからず、外国人旅行者のニーズと結びつかないままに終わる。こうした状況を打開するため、JNTOではサステナブルツーリズムに焦点を当て「自然と自然に根差した文化」をコンセプトに50のサステナブルツーリズムのコンテンツを紹介する英語版のデジタルパンフレット「EXPLORER DEEPER-Sustainable Travel Experiences in JAPAN」を制作したところ、欧米系の旅行者を中心に好評を得たという。「単に素晴らしい建築物があることや、その美しさを説明するだけでなく、サステナビリティに対する取り組み方なども含めた一歩踏み込んだ紹介の仕方をすれば、評価がさらに高まり、地域への滞在日数が増える手応えもあった」と、その反応についても説明した。

飛田氏

 飛田氏は伝え方次第で文化観光の可能性を拡げられる事例として山陰地方にある棚田を挙げた。ブナ林に囲まれた棚田は眺めるだけでも美しく魅力的な文化観光の素材だが、それだけにはとどまらない。この場合に伝えるべき背景は、この棚田がもともとはこの地で行われていた「たたら製鉄」のために、砂鉄を採掘し水を使って選別していた作業場跡地に作られたものであること。さらに周囲のブナ林は「たたら製鉄」の燃料として植えられていたものだったという歴史的背景だ。こうした歴史を含めた説明を加えて伝えることで、単なる景観観光での1回きりの訪問ではなく、次のリピートにもつながるという。

 高橋氏が文化観光の可能性を広げる取り組みとして具体的に挙げたのは、北陸新幹線福井・敦賀開業に向けた福井県の魅力発信プロジェクト「FUKUI TRAD」だ。この取り組みでは伝統工芸をクリエイター集団がリメイクする試みも行われており、海外のクリエイターが福井に長期滞在してプロジェクトに参加。日本の伝統文化の価値向上に海外クリエイターが力を貸した。高橋氏は「海外の視点で伝統文化を評価してもらうことによって新しい価値を生み出せる。京都の和傘屋の作品が、和紙と竹でできたシャンデリアとして高級ホテルにも納入されるようになったケースもある」とその可能性に期待する。