文化観光の可能性、インバウンド観光振興に向けて-第1回クールジャパン データ&デジマケまつりより

  • 2022年12月8日

 クールジャパンデジマケまつり実行委員会は11月21日から24日、「第1回クールジャパン データ&デジマケまつり」を開催した。「クールジャパン戦略をデータ&デジタルのチカラで盛り上げるハイブリッドイベント」と銘打って開催された同イベントでは、クールジャパン戦略にかかわるさまざまな課題に関するトークセッションが4日間わたって行われた。

 今回はその中から「文化観光のポテンシャルを探る!~インバウンド観光振興の“これまで”と“これから”~」を紹介する。セッションに参加したのは、日本政府観光局(JNTO)理事長代理の蔵持京治氏、文化庁参事官(文化観光担当)の飛田章氏、ジェイアール東日本企画常務取締役社長補佐CDOソーシャルビジネス・地域創生本部長の高橋敦氏で、WAmazing代表取締役CEOの加藤史子氏がモデレーターを務めた。

左からWAmagingの加藤史子氏、JNTOの蔵持京治氏、文化庁の飛田章氏、ジェイアール東日本企画の高橋敦司氏.png

文化観光は地域のストーリーとして紹介

 まず日本における文化観光のあり方について、蔵持氏が「観光とはさまざまな場所を訪れて見て味わう体験であり、その要素との1つとして、そこで体験する文化もある。この体験をいかに楽しく面白いものとするかがサービス提供側に求められることだ。またJNTOには、面白く楽しいものを発掘し発信しPRする役割がある」と説明した。そのうえで、訪日外国人旅行者に対して伝える難しさにも言及。「たとえば外国人旅行者にとっては、寺は2、3ヶ所見ればそれで満足となりがちだ。しかし各地域には地域に結び付いた寺も神社もあり、それぞれ別のものだ。したがって寺や神社も地域のストーリーと合わせて紹介していく工夫が欠かせない。そうしなければ京都の寺以外に外国人旅行者を惹きつけることはできない」というわけだ。

 飛田氏は地域に根差した文化が、それぞれの地域に存在するのが日本の特色だと強調。「地域に根差した歴史や人々の営みの蓄積が文化であり、訪れた人にはそれらを踏まえたうえで地域が持つ文化財の本質を理解してもらわねばならない。そのためには調査研究に基づき本質を見極めて伝える地道な努力が重要になってくる」と指摘。各地の博物館や美術館では収集、研究、展示に力を入れ文化財の保存と活用が図られている。しかし本質を伝える努力が十分に取り組まれているとは現状では言い難く、飛田氏は「これからは利用者目線でより分かりやすい伝え方を工夫していくことが大事になってくる」とした。

高橋氏

 高橋氏は文化観光の振興がいかに人々を潤す取り組みなのかについての理解促進を求めた。「人口が減少する日本では、文化観光によって人を惹きつけることが、他国よりはるかに切実な問題。観光先進国とされるフランスや米国以上に観光振興は我が国にとって切実な問題だ。定住人口1人当たりの年間消費額は約130万円とされるが、人口減少率が一番高い県にこれを当てはめると、10年間で1000億円以上の消費額を失っていることになる。これを埋めるには観光客を誘致するしかない」からだ。加藤氏が「訪日外国人旅行者は訪日旅行1回あたり25万円程度の消費が期待されており、つまり訪日外国人を5人連れてくれば定住人口1人分の減少を補える」と補足した。

 さらにこうした経済的観点から、旅行者の来訪をきちんと消費額につなげる工夫も重要だとし、「日本の博物館や美術館は入場料が数百円。それに対してヨーロッパ当たりの入場料は最低でも30ユーロほど。その代わり必ず行き届いた解説が聴けるオーディオ機器がセットになっている。人数掛ける単価が消費額である点を意識した仕組みを工夫していくべきだ」と提言した。

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