itt TOKYO2024

One to Oneマーケティングでロイヤルゲスト作りを目指す、三重県観光マーケティングプラットフォーム

  • 2022年12月5日
-気仙沼の視察についてのお話がありましたが、どういった点が参考になりましたか。

川口 DMOが地域全体のマーケティングに取り組み、地域の事業者にしっかり稼いでもらうことで、地域が外貨を稼ぐ体制ができていることですね。そのための基盤として気仙沼ではサイモンズさんのポイントシステムを導入し、DMOが地域全体のデータを把握できる体制を整備していました。地域全体の顧客データがあるからこそ、顧客ニーズに応じた商品設計を行い、ダイレクトマーケティングを行うことができます。また顧客データに紐づいた購買データも把握できるので、実際の施策の効果を確認でき、その数字を見ながらPDCAを回す仕組みが地域全体ででき上っています。三重県でもそのような姿を目指し、三重県観光マーケティングプラットフォームを基盤として、観光マーケティングを推進していきたいと考えています。

-今年度の課題としているデータ拡充のための取り組みについて教えてください。

川口 CRMに旅行者のデータを蓄積していくには旅行者との接点が必要ですが、行政は直接的な観光サービスを提供していないため、データ収集は難しい側面があります。そこで、観光事業者のマーケティングをサポートするツールとして、アンケートシステムや地域OTA、観光アプリなどを提供し、そのツールを通じて旅行者のデータがCRMに一元管理される仕組みとしています。

 また、CRMに蓄積された旅行者をロイヤルゲストにしていくためには、来訪者のロイヤリティを高めていく仕組みが必要不可欠です。そのために、セールスフォース社のMAを活用し、旅行者のニーズに合わせたOne to Oneマーケティングを展開するとともに、航空会社のマイレージのようなロイヤリティプログラムを実施することが必要だと考え、11月から「みえ旅おもてなしポイントプログラム(略称:みえポ)」を開始しました。

「みえポ」特設サイト

 これは、旅行者が三重県内でアンケートに回答してくれたり、宿泊してくれたり、県内を周遊してくれたりといったことに対し、感謝の気持ちを込めてポイント(みえポ)を付与するものです。「みえポ」の特典としては、貯めた「みえポ」の数に応じて、プレゼントに応募ができるようになっていますが、今後は、多くの「みえポ」を貯めていただいた方を「ロイヤルゲスト」と認定し、特別なおもてなしができるようにしていきたいと考えています。また、県内の地域において、地域独自のロイヤリティプログラムが実施できるように設計していますので、今後は地域における取り組みも促進していきたいですね。

-「ロイヤルゲスト育成を目指す観光DX推進事業」の具体的な数値目標は。

川口 3年後のロイヤリティプログラム参加者数3万人、3年後のロイヤルゲスト数1000人が目標です。

 ロイヤルゲストの定義づけは難しい面もありますが、実証を通じて定義についても考えつつ、数年単位で成果を上げていければと考えています。またOne to Oneマーケティングや地域版のロイヤリティプログラムについても実証し、効果検証を行ったうえで、今後の施策展開に繋げていきたいです。

糸川氏

糸川 三重県を来訪する頻度や、観光アプリの使用頻度、宿泊予約情報、地域における買い物の頻度などのデータもロイヤルゲストの見極めの鍵になりますし、SNSで三重県の情報をどれくらい発信してくれるかも目安にできると思います。

-CRMで収集したデータは事業者が利用することもできるのですか。

川口 CRMで一元管理する旅行者データは基本的に県全体で収集・活用していきますが、アンケートシステムを活用すれば、事業者自身も自らの施設でアンケートに回答してくれた来訪者のデータを分析できる仕組みにしています。また、観光アプリを活用すれば自社のロイヤルゲストを把握することもできるので、データを活用したマーケティングに取り組んでもらいたいです。さらに、このようなツールを通じて一元管理される旅行者データについては県において分析をして、事業者の方々にフィードバックしていく予定としています。

次ページ >>> DXに期待すること