和田長官「観光は新たなステージへ、復活に向けギアの切り替えを」 訪日観光消費5兆円は前倒しの達成も
観光庁の和田浩一長官は10月19日の専門紙会見で、10月11日から水際対策が緩和され、全国旅行支援も開始されたことを受け、「コロナ禍で観光に携わる皆様は大変苦しんだ。これからステージが変わり、観光の復活に向けてギアを切り替えて取り組んでいかなければならないと思っている」とコメントした。
インバウンドに関しては消費額の増加と地方への誘客の強化を課題として挙げ、「『高付加価値なインバウンド観光地づくり』などで既に準備を進めているところだが、消費単価を上げてくことに力点を置いた対策を講じていく必要がある」と語った。また、コロナ禍により世界の旅行者の意識がサステナビリティを重視する方向に変わっているとして、変化に対応した施策をタイムリーに打っていく必要性を強調し、2025年を見据えた新たな観光立国推進基本計画にも加えていきたいとの考えを示した。政府の総合経済対策で外国人旅行消費額の目標を年間5兆円超とすることについては、「大阪・関西万博が開催される2025年に、インバウンドに係る様々な数値をコロナ前の状況に戻すことを基本的な考え方」としつつ、円安のメリットも活かし、前倒しの達成を目指して集中的に取り組むと話した。
全国旅行支援では、予算配分や事前予約の取り扱い、都道府県毎のルールの違いなどにより現場で混乱が発生しているが、和田氏は「観光庁としては、旅行者の利便を確保するために、事業者ごとに販売できる機会に大きな差が生じないよう販売実績等に応じて都道府県から関係事業者への予算配分を随時見直すなど、全都道府県に通知を出している。また旅行事業者が各都道府県と個別に連絡を取らずとも一括して申請等を処理できるよう、国としても統一的な事務処理が可能な体制づくりを支援するなど、円滑な運用が図られるよう取り組んでいる」と説明した。
また全国旅行支援の予算配分については「一部のOTAなどで予算枠がなくなっているということだと思う。既に割り当てているリアルエージェントや宿泊施設の予算枠で余りがあれば、それを販売実態に応じて再配分してもらうやり方もある」と説明。さらに各都道府県には、1つのOTAで予約が取れなくても別の旅行会社や宿に直接申し込めば取れる可能性があるため、旅行者に対して色々な方法を試してほしいとお願いするよう通知しているという。「2年前のGo Toトラベルは5ヶ月で5400億円を使用した。今回は5600億円の予算に県民割の予算の余りもあり、期間は2ヶ月強なので、本当に予算が足りないかはよく調べる必要がある。新たなGo Toトラベルの予算から追加配分をしないとは言わないが、現在配分している予算をいかに有効活用して円滑に旅行に行っていただけるか、適切に対応していきたい」(和田氏)。なお、現状では全国旅行支援の期間は12月下旬までだが、その後については需要動向や感染状況を踏まえて検討していく方針だ。
観光産業への支援策については、Go Toトラベルの給付金の不正受給により、業界の信用が問題視される声もある。不正受給に関与した企業への刑事告訴や処分が困難な見通しであるとの報道に対して、和田氏は「Go Toトラベル事務局等を通じて必要な調査を進めている」として具体的な発言は控えたが、「全国旅行支援での不正防止は重要な観点。事業主体である各都道府県において適切に対応していただけると考えているが、Go Toトラベルで不正に給付金を受給するなどした事業者については、全国旅行支援への参加を認めないことで、新たな不正を防止することとしている」と説明した。
アウトバウンドについては「円安はアゲインストになるし、燃油費の高騰などによって移動費が高くなるという課題もある。一方で水際対策が緩和されたというプラスの材料もあり、これがどう作用していくかを注視している。関係業界とも連携を密にして考えていきたい」とコメントした。なお、9月の日本人出国人数は31万9200人(19年比81.8%減)、8月は38万6412人(19年比81.7%減)だった。