【発行人コラム】2年7ヶ月ぶりの海外出張

  • 2022年9月29日

 先日、実に2年7ヶ月ぶりに海外出張(シンガポール)に行って来ました。今月の発行人コラムは久しぶりの海外出張で見聞きしたこと、感じたことをお伝えしたいと思います。

 日本出発前にしたことはデジタル庁のワクチン接種証明書アプリのダウンロードとSG ARRIVAL CARDの申請のみ。デジタル庁のアプリは秀逸で、マイナンバーカードはかざすだけ、パスポートはカメラで読み取り、ものの3分で完了。これまで政府が関与したアプリとしては最高の出来なのではないかと思います。

 SG ARRIVAL CARDもWEBから簡単に申請(日本語有り)出来て、コロナによる面倒はワクチン接種証明のQRコードをアップロードするだけ、少なくとも日本出発前の煩わしさは殆ど感じませんでした。

 シンガポールへの入国も至ってスムーズ、機内で記入すべき書類もないので、何なら出張で数ヶ月に一度訪れていたコロナ前より簡単だったかと思います。

 今回のシンガポール滞在で彼我の違いを感じたのは、3日間の滞在中一度も検温されなかったことと、マスクをするもしないも完全に個人の自由で、ノーマスクで嫌な目で見られることは一度も無く、かと言ってマスクをしていても奇異な目で見られることも無い点です。

チャンギ空港に隣接する複合施設「Jewel」の様子

 そして、これはたまたま良い縁に恵まれているだけかも知れませんが、今回お会いしたシンガポール在住の方々(グローバルOTA勤務、公認会計士・会計事務所経営、元当社のSIN法人役員で今は米系IT会社勤務、つい最近シンガポールへ移住した事業家等々)は皆さん揃って元気で、明るく前向き、より良い未来を切り開いて行く気概に溢れていました。

 もちろん日本にもそのような方は居られますが、コロナ禍中を異国で過ごされた(或いはコロナ禍中に移住した)方から学ぶ、感じるものは大きな刺激となり、観光産業に従事する我々自ら率先して国境を超える事の大切さを実感しました。

 そんな余裕どこに有るんだ等の声を頂くでしょうが、無理をして、私費ででも、特に経営サイドに居られる方々は、お客様に先んじて海を超える必要が有ると思います。

 もう2つ、プロ(一応)として今回の渡航で感じた事を最後にお伝えします。

 今回初めてZIPAIRを利用したのですが、ご存知のようにZIPは燃油サーチャージを取らないため、他社と比較してトータル運賃は格安です。一方、機内食や預入荷物等は別料金となっています。

 そして、上級クラス(ZIPの場合フルフラット)の選択も機内食などと同じオプション扱いで、搭乗や降機の順、機内でのサービスでの特別扱いは一切有りません(私の感想です、もし間違っていればZIP関係者の方、ご指摘下さい)、そして変更や払戻は原則不可。

 利用してみた感想ですが、一言で言えば「悪くない」。

 ただし、フルフラットを利用するお客様でFSC同様特別扱いを望む、ラウンジ必須のお客様には向かないかと思います。また、業務渡航での利用に関しては、5回に1回、キャンセルや変更でロスが出ても年間トータルコストでは安いと思えるリピーター向けとも言えるかも知れません。

 そして何より売る側の我々が、価格とサービスは基本相関することをしっかりと認識し、お客様にもそれを伝え、より良い選択を促す事こそが我々の重要な仕事で有ることを再認識しました。

※帰国便が7時間遅延し、空港ロビーの椅子で待つのは辛かったですが、これも価格を考えればギリギリ我慢出来ました(とは言え、制限区域内に入ればソファー席や有料ラウンジも使えるので、遅延の時だけでもチェックインは離陸の3時間より前にできるようになると嬉しい・・)

※燃油サーチャージですが、普通に考えると航空輸送を構成する極めて重要な要素である燃油を「運賃」と別立てにする、それもケースよっては「運賃」より「燃油サーチャージ」が高い航空会社の価格設定には大いに疑問を感じます。少なくとも想定される最低限の燃油コストは「運賃」に含め、想定との差額のみをサーチャージとする(或いは減額する)方が良いように思うのは私だけでしょうか?未だにWEB上では「運賃(燃油サーチャージ抜き)」を表に出して「安さ」を打ち出す会社も有り、消費者保護や適正競争の観点からも見直されるべきでは無いかと思います。この件に関しては、監督官庁に意見を聞く機会を設けたいと思っています。

 もう一点はホテルの価格です。

 コロナ前から定宿としているJWマリオットサウスビーチに今回も泊まったのですが、シンガポールドル建ての料金としては約2割の値上げですが、コロナ前と比べると円が2割弱くなっているので、円での感覚としては1.5倍の価格となります。

 シンガポール在住の知人の話によると、3ヶ月で家賃が3割上がったとの事、流石にそれは行き過ぎとは思うものの、それを受け入れる、或いは幾らでもその値段で入居者がいると言う事で、日本との状況のあまりの違いに驚くばかりです。

 最近、資材等輸入品の「買い負け」をメディアが報じていますが、旅行素材に関しても相場観を一新するとともに、買い手優位の妄想を捨て、安売りから脱却しない限り間違いなく「買い負け」の憂き目に会い、せっかく戻りつつある需要を逃がすことになりそうです。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、32周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、観光産業を構成する中小及び個人事業主連合会(TIFS)会長​