観光のサステナビリティ、コロナ機に取り組み強化を-TEJ観光大臣会合、官民連携訴え
サステナビリティは「戦略の中核」、政府は基盤整備を
欧州からはスペインのベレルスト長官が参加。「サステナビリティは我々の戦略の一部ではなく中核」であり「スペインの観光業で何かをしようと思ったらバリューチェーンのあらゆる場面でサステナビリティの視点を盛り込むことが求められる」ようになっていることを紹介し、市民と旅行者が共存できる政策を立て地域の自治体や組織、企業などと共同で取り組むことが重要とした。
また観光振興では地域の行政や企業が自ら観光のあり方やプロモーションについて考える「独立したガバナンス」が重要と指摘。政府は我々は戦略ではなく手段を提供するとして、イノベーションやテクノロジー、アクセシビリティなどに関する基準などの基盤整備を重視していることを説明した。
一方、WTTCのロドリゲスSVPは欧州について今夏の酷暑による影響の大きさにも言及。全世界で行動しなければならない段階だが「多くのデスティネーションは準備ができていない」とし、各国政府が普遍的な方法と基準で気候変動を監視するとともにより多くの予算を投下できるようにし、空港や海港、スマートグリッドなどのインフラ整備、SAF(持続可能な航空燃料)の利用推進などを進めるよう訴え。観光地側へのインセンティブ提供も交えて取り組むことで新たなビジネスチャンスも創出可能と語った。
「教育」を再重視、回復力向上へ基金提案も
ジャマイカのバートレット大臣は教育の重要性を強調。「カリブ海の小国であるジャマイカのような国では資源不足が課題」だが、「資源が足りないなかで生きようとすると必ずしもサステナブルでない選択肢を取りかねない。だからこそ教育が重要になる」との考え。そしてその上でその教育の成果となる適切なプロダクトが形になるよう資金など経済的基盤を用意し、さらにそのプロダクトにマーケティングの機会を提供する、という3段階の手立てによって利益を得ながら持続可能な観光を実現する枠組みを構築しているという。
また、コロナ禍などの危機からの「レジリエンス(回復力)」もサステナビリティへの課題となると指摘。「世界の観光で重要な役割を果たす国々の多くは小国で観光への依存度が高く脆弱」であると強調。今後も予期される危機の際に、そうした国々が状況を管理し、回復し、生き延びるレジリエンスに特化した基金の設立を呼びかけた。
南アフリカのンゴニャマ大使は、南アフリカでは観光への依存度が高く観光の停滞は社会や経済の成長、国民生活への悪影響に繋がることから、政府として観光の可能性を再検証し、観光産業が気候変動の影響に素早く効果的に対応できるよう行動計画を策定していることを説明。観光省と環境省の共同調査や観光業のエネルギー効率向上プログラム、さらに全国民をステークホルダーとして巻き込んでいくためのコミュニケーション戦略も立てているという。
「罰ではなくインセンティブ」で「善の促進」を
ATTAのストーウェルCEOは「観光は善を促進する力になり得る」とコメントしつつ、実際には米国の旅行者を対象にした匿名調査では気候変動が最も関心が低い項目となっていること、その一方で削減しなければならない二酸化炭素の排出量は2050年に年間10ギガトンにも上ることも紹介。フィリピンやジャマイカに続いて教育の重要性を指摘するとともに、関係者の力を集約してレバレッジをかけることでより大きな成果を目指すべきと訴えた。
また、「アドベンチャーやアクティビティの業者は小規模の企業が多く変化には助けが必要」であるとし、電動車両への切り替えや再生可能エネルギーの採用に税額控除を提供するなど「罰ではなくより良い行動へのモチベーションを」と呼びかけた。