札幌クリエイティブホテルアライアンスが初のイベント開催、気鋭の若手3人が描く「コンセプチュアルなホテル」とは
コンセプトホテルの可能性
今後チャレンジしたいことやビジネスチャンスを感じている分野は何かという質問では、松下氏は「ローカルのビジネス作り」と答えた。東京から金沢に移住して、ローカルのコンテンツの価値の高さを実感したという松下氏は、映画撮影のサポートやエリアは異なるがコザスタートアップ商店街のブランディングの仕事も手掛けている。「今後もホテルの枠を超えて地域の魅力を発信する活動をしていきたい」(松下氏)。
龍崎氏が目指すのは「脱・観光業」のホテル。スモールラグジュアリーホテルは引き続き運営しながら、「必ずしも観光という文脈に縛られずに泊まりに来られる、ライフスタイルにおける何らかの機能を代替するホテル」を作りたいという。5月にオープンした里帰り出産をホテルで代替する産後ケアリゾート「HOTEL CAFUNE」もその一例だ。同じ観点で、実家や友人に子どもを預ける代わりに利用できる保育園とホテルの機能を掛け合わせたキッズホテルや、自然体験ができるキッズプログラムとワーケーションの両方が揃い家族皆が楽しめる施設、あるいは語学留学する代わりに英語が公用語のホテルで働く人を集めるなど、世の中にあるニーズでまだホテルと紐づけて考えられていない部分にポテンシャルを感じているという龍崎氏。「ホテルが観光業の一部として捉えられているがために期待が限定的であることから脱却し、ニーズを深堀りし、教育や福祉に寄ったホテルを作りたい」と結んだ。
「今までチャレンジしたいことは実現してきた」という山崎氏も「FITが主流になり、旅のプロセスを全て自分で選ぶ時代において、コンセプトを絞りエッジの立ったホテルは今後ますます選ばれるだろう」と、引き続きコンセプトホテルを作っていきたい考えだ。一方で、「コンセプトに伴うオペレーションや、目指すべきマーケット規模のバランスを取るためには、50室から150室の規模が最適と考えている。また、コンセプチュアルなホテルは万人受けするわけではないため、大手旅行会社を介した販売には向いていない面がある」と分析。社会に向けたメッセージ性の高いホテルづくりを広げていくことに意欲を示した。