サステナブルな訪日旅行とは?旅行会社は地域と理念の共有を-JNTOフォーラム
地域と旅行会社、旅行者で連携する仕組みを
地域と理念を共有、「地域は下請け」からの脱却を
パネルディスカッションの後半では、「今後挑戦しようとしていることと、日本の観光産業に必要なこと」をテーマにパネリストが意見を交換した。下地氏はインバウンドの本格再開に向け、世界をターゲット市場としてみることが重要であると指摘。コロナ以前に那覇から海外15都市に運航していた直行便の再開をめざす考えを語るとともに、航空会社各社にサポートを実施する考えを示した。さらにオーバーツーリズムの問題を解決しながらの訪日クルーズの振興についても意欲を述べた。
サステナブルツーリズムの観点からは、沖縄県で大きな問題となっているサンゴの白化現象について「避けられない部分ではあるが、養殖を含めて再生をしていきたい」とコメント。「住んでよし、訪れてよしという基本に加え、受け入れてよしということが大事。地域から日本の観光を引っ張り、日本を元気にしていきたい」と話した。
芹澤氏は、「環境、社会、経済の視点から、観光業者や旅行業者が受入地域にどう貢献できるかが一つの大きな指標」と改めて強調。日本の四季、自然や文化、歴史などの多様性を「観光立国先進国になる素材が揃っている」と評価し、日本の魅力について「もっと日本人が愛着を持つべき」とした。
なかでも自然環境については「40年世界中の国をプロデュースしてきたが、ある意味日本ほど多様性のある自然環境はない」とアピールした。アルパインツアーサービスではコロナ禍において、国立公園でのトレッキングなど日本各地のツアーを造成・実施してきたところ。今後はインバウンド向けのツアーへの切り替えについて準備を進めるとともに、ロングトレイルなどの商品を造成して国内外にアピールしていく考えだ。
最後に同氏は「持続可能なツーリズムの実現というのは、旅行業者がプロとして向き合い、地域や環境へ責任を持つこと」と主張。「旅行業者がこうしてほしいといったものを商品化するという意味で、地域が下請けになってしまうケースを多く見てきた」と語り、旅行会社は地域が伝えたい理念を共有し、地域に愛着を持ち、地域との関係を変えていく必要があるとした。
半藤氏は「サステナブルツーリズムでは良いお客様に来てもらって満足してもらい、リピーター化することが望ましい」とコメント。そのために、「高付加価値化と住民や観光客を巻き込んでいく観光地経営」と、参加者が観光地を持続可能なものに維持するため、主体的に関わるような仕組み作りが必要とした。さらに、「旅行が地元のコミュニティにどのようなインパクトを与えるのか、旅行者自身が問いかける機会を作ることも重要」と指摘。観光地が観光客に、環境や生態系の保護を求めるなど「プレッジ(約束)」を求める動きがあることを説明した。
パネルディスカッションの最後には、司会を務めたJNTO理事長代理の蔵持京治氏が、今後サステナブルツーリズムを進めていく上で「観光地や旅行会社だけでなく、旅行者にも変化を求めていくことが必要」とまとめるとともに、「JNTOとしてどうやって地域を守っていくのかという観点で、世界に向けて情報発信していきたい」と話した。