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サステナブルな訪日旅行とは?旅行会社は地域と理念の共有を-JNTOフォーラム

  • 2022年9月13日

地域と旅行会社、旅行者で連携する仕組みを

  パネルディスカッションの様子

 インバウンドへの制限が次々と緩和されてきている。9月7日には1日の入国者数の上限がこれまでの2万人から5万人に引き上げされ、添乗員なしのパッケージツアーの受け入れも開始。ワクチンを3回接種していれば入国時の陰性証明書の提出も不要になった。こうしたインバウンドに追い風が吹くなか、日本政府観光局(JNTO)は9月7日、8日に「第25回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を都内で開催。9月7日には近年のトレンドを取り上げた「サステナブルツーリズムを通じた地域の活性化について」と題したパネルディスカッションを実施した。今回はパネルディスカッションの様子を紹介する。

【パネリスト】
沖縄観光コンベンションビューロー会長 下地芳郎氏
アルパインツアーサービス代表取締役社長/日本アドベンチャーツーリズム協会理事 芹澤健一氏
カナダ観光局日本地区代表 半藤将代氏
【ファシリテーター】
JNTO理事長代理 蔵持京治氏

サステナブルツーリズムのポイントは「旅行者を巻き込む」

カナダ観光局の半藤氏

 パネルディスカッションではまず、「なぜサステナブルツーリズムを推進しているか」をテーマに、パネリストが事例を交えながらそれぞれの取り組みを発表した。カナダ観光局日本地区代表の半藤将代氏は、カナダでのサステナブルツーリズムの取り組みについて「環境面、文化社会面、経済面のサステナビリティを重視し、観光の力でその土地をより良い状態にして次の世代に引き継ごうとしてきた」と説明。地域の幸福と旅行者の人生を豊かにする観光の両立を目指してきたことを語った。

 その上でサステナブルツーリズムに必要なこととして、地域の将来を見据えた観光の目的を設定すること、地域の自然・文化・暮らしなどの「地域のDNA」を再認識してそこでしかできない「本物の体験」を観光客に提供することを挙げた。半藤氏は「地域のDNAがその土地のストーリーを生み、ストーリーにより顧客と共感で繋がることができる」と強調。キーワードとして「巻き込む」をあげ、住民や観光業以外の異業種に加え、「観光客を巻き込むことでサステナブルツーリズムが実現できる」と語った。

 同氏は具体的な例として、カナダ最東端のフォーゴ島を紹介した。フォーゴ島は外国の大型船によるタラの乱獲により生業のタラ漁が振るわなくなったため、政府から漁師たちの退去勧告が出された「見捨てられた島」だった。しかし2000年代になり、島出身の女性がはじめたラグジュアリーホテル「フォーゴ・アイランド・イン」を中心に、島全体で観光客をもてなしたことで観光により劇的な復活を遂げたという。

 ホテルは観光で得た収入を島のコミュニティに還元する仕組みで、売上が何に使われているかを明示する「経済成分表」データが一般に公開されている。また、宿泊者の興味のある分野をもとに、島民が島を案内する「コミュニティホスト」プログラムや、島に芸術家を誘致する「アーティストレジデンス」プログラムなどが功を奏し、1泊約16万円にも関わらず、世界中のセレブや政治家などが利用する非常に人気の高いホテルになった。半藤氏は「愛する故郷がいつまでも良い状態で続いてほしいという明確な目標があったからこそ成功した事例では」とまとめた。

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長の下地芳郎氏は、沖縄の観光について「中心にあるのは、自然と文化という非常に重要な資源をいかに守りながら育てていくのか」と説明。島民の生活を守ることも重要であるとし、「サステナブルツーリズムということを特別なものにする必要は本来はないはず。基本は良い地域を守っていくところにある」と語った。

 沖縄ではサステナブルツーリズムにおいて、「SDGs」「レンタカーに頼らない観光」「エシカルトラベル(人や社会・環境などに優しい観光)」の3つの観点で取り組んでいるところ。下地氏は例として、MICEのサステナビリティガイドラインを設定したことや、レンタカーに頼らない観光に関する情報発信を継続していることを説明した。OCVBでは2021年10月から、公式観光情報サイト「おきなわ物語」で「レンタカーだけじゃない!おきなわ旅の楽しみ方」特集を掲載している。このほか、エシカルトラベルについては「観光客も参加しながら、ともに地域の自然文化を学びながら守る必要がある」と話した。