サステナブルな訪日旅行とは?旅行会社は地域と理念の共有を-JNTOフォーラム
地域と旅行会社、旅行者で連携する仕組みを
「地元への貢献」意識し旅行商品を造成
アルパインツアーサービス代表取締役社長で日本アドベンチャーツーリズム協会理事を務める芹澤健一氏は、サステナブルな旅行商品について「(旅行会社として)地域の文化や歴史などを取り組んだ企画造成を、特に意識せず長年ずっと積み上げきた」と振り返った。
同氏は例としてネパールでのトレッキングや、インカ・トレイルを歩いてマチュピチュを訪れるツアーなどで、ガイドやポーターの村を訪れて村人と交流し、土産物を購入するなど地域経済に貢献する機会を設けていることなどを紹介。ニュージーランドのフィヨルドランド国立公園を訪れるツアーでは、絶滅の危機にある「飛べない鳥」タカヘを保護するため、ツアー代金の売上の一部をニュージーランド自然保護省に寄付し、訪れる地域の自然保護にも協力していることを語った。その上で同氏はツアーについて「必ず何か地元に貢献献できないかということを一つのテーマとして取り組んでいる」とした。
さらに芹澤氏は、アドベンチャーツーリズム(AT)について言及。アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち2つ以上で構成される旅行を指すもので、JNTOが2022年度の訪日誘客の重点分野として挙げている。芹澤氏は「アクティビティを通じて地域の文化や自然を体験し、そこに学びや自己変革などが合わされば、参加者は意義を感じ、地域への貢献や経済効果に寄与することになる」とATのメリットを強調。「日本にとっては新しい旅のあり方の提唱かもしれないが、多くの訪日外国人を迎えるにあたり、きちんと整備すべき」との考えを話した。
その上で、ATの推進には「地域の素材をいかに生かすかが非常に需要」と訴えるとともに、そのためには地域を案内するガイド役が重要になってくるとした。特に地元への愛着を持ち、伝えたいという情熱があるガイドを育成する必要があるという。加えて同氏は、世界的なATの組織団体「Adventure Travel Trade Association(ATTA)」のガイドスタンダードを指標にすることを提案した。ガイドスタンダードでは「持続可能性」「安全性」「品質と意義」の3点を重視しており、生物多様性の保全や自然環境への影響を最小限にとどめることなどを求めている。
その上で芹澤氏は「持続可能なマネージメントはその地域にどう関わるか、そしてその地域の経済効果と利益を最大限にし、悪影響を最小限にとどめ、環境への配慮を最大限すること」が重要であるとした。