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業界ニュースを振り返る ー 旅行会社への契約料金は顧客へのコストの上乗せ?

  • 2022年8月19日

 お盆明けのトラベルビジョン、トップ1・2はどちらもコラム系でした。1位の柴田氏のコラムも、2位の近藤氏のコラムも強烈な問題提起で、コメント欄も賛否両論の様子です。

 まずはトップの柴田氏のコラムですが、内容とコメントどちらも読んでみて問題点となるのは主に2点なんではないかなと思いました。

 1つは柴田氏も記載されている旅行会社とサプライヤーの間にある大きなギャップです。旅行会社からすればそもそも「契約料金もなければ利用したこともないサプライヤーをプッシュできない」というのはある意味当然である一方、サプライヤー側からすれば「実績もないところに契約料金なんて出せない」となるでしょう。この問題点はそれぞれのプレイヤーからしたら当然のことではあります。最近できたきれいなインスタ映えするようなホテルや、格式高い旅館なんかのサプライヤーであれば「いやいや、旅行会社さんに契約料金支払うくらいならインフルエンサーに宣伝してもらったほうが費用対効果いいですよ」ということになるところもあるのでしょうが(それもそれで旅行業界としてはどうかと思いますが)別に世の中のサプライヤーはそんなところばかりではありません。
 B2C向けにマーケティングを打てないサプライヤーとしては、旅行会社とはうまいこと付き合っていきたいところでしょう。ただ、ここらへんは仕組み化でどうにかできる気もします。年間でいくら以上売ってくれたら1%バック、いくら以上なら3%バックみたいな航空会社のインセンティブみたいな売り方をすれば、旅行会社には売る動機付けができますし、サプライヤーとしては無駄撃ちみたいな契約料金を出す必要もなくなります。私が無知なだけですでにありそうな気もしますが。

 もう1点の問題となりそうなところは、旅行会社にキャンペーンを打つのは宿泊者には還元されないどころかコストを上乗せしている、というところでしょうか。ただ、これは個人的には「まあそういうものでしょう」というのが結論です。どんな商売もまずは知ってもらわないとどうしようもないので、そこにもコストをかけるのは当たり前の話で、だから昔からマーケティングや営業という部署があるわけです。当たり前ですが、営業がいることは直接的にはサービスや顧客満足度に寄与しませんから、旅行会社への契約料金にだけ目くじらを立てる必要もないのかなと。営業もマーケティングもなしに口コミだけでどんどん広まるというのが理想ではあるんでしょうが、現代では残念ながら経済競争にそれでは敗北するのでしょう。

 次に宿屋大学の近藤氏のコラムの方です。これはシンプルにレベニューマネジメントの話だなあというのと、もう1つはそもそも前提として宿泊業はビジネスであるということです。小学生でもわかる話ですが、1部屋単価5万円で満室なのと、1部屋単価10万円で稼働率50%なら売上は同じわけですから、従業員の数やホテルの清掃やらなんやらにかかるコストも考えたら後者のほうがビジネスとしては優れていると考える人は多いと思います。満室だとそれ以上売上を上げるポイントは限られますが、後者であれば直前まで売れる部屋があって稼働率が55%になる可能性もあるわけですし。慈善事業ならそれでも「安くたくさんの人に泊まってほしい」もありだと思いますが。
 それに、ここで稼働率を100%にしないビジネスモデルはお客様の満足度は下がらないと思うんです。10万円のホテルに泊まらない人は残念がら顧客ではないわけですし、10万円出す方からすれば、スタッフにも余裕があってレストランも空いている宿泊施設のほうがいいですしね。
 まあ、こんなこと言いながら私みたいな人間は「高くされると困る!混んでてもいいから安くしてくれ!」と思ってしまうわけですが……残念ながら高級宿泊施設の対象にはならないタイプの人間です。