【ホテル総支配人リレーインタビュー】第16回 ANAインターコンチネンタル石垣リゾート 総支配人 秋間友氏
ホテル業界が取り組むべき人材問題
本気で待遇改善を図らなければ未来はない
秋間 赴任してから1年かけてチームメンバーたちと話し合い、ホテルのビジョンを支える4本柱を明確にしました。その1つがローカルコミュニティとの良好な関係作りです。この島でホテルを運営させていただいている感謝と、謙虚な気持ちを忘れないことが大切だと皆で再確認しました。そのうえで持続可能な利益を上げていくことを目指します。
正直なところSDGsという単語は前面に出したくありません。コマーシャル臭を感じてしまうからです。取り組みの1つ1つが、結果としてSDGsの掲げる項目に紐づいていればいいと思います。紙ストロー導入や大型のシャンプーボトルへの入れ替えなどには取り組んでいますが、むしろ周囲の人たちに課題に気付くきっかけを与える役割の方を重視しています。
そこで、沖縄出身のアーティスト/イラストレーターのPokke104さんを起用して敷地内に壁画を描いてもらいました。海や陸の生き物や夜空の星、八重山の文化などをモチーフに、自然や生物の多様性を表現した壁画は、人気のフォトスポットになりました。これを見たお客様の心に、八重山の生き物や文化を大切にする思いが生まれ、課題を考えるきっかけになってくれればと思っています。
秋間 若さの強みをあまり意識したことはありませんが、チームメンバーと比較的年齢が近いことで距離感が近づく面はあります。だからというわけではないのですが、時間を見つけては館内を歩き、とにかく多くのチームメンバーと会話を交わすように心掛けています。これは部門長クラスにとってはプレッシャーです。私の方が彼らより早く情報を知ることになるからです。彼らには予め「聞いてなかった」「報告がなかった」との言い訳は受け付けないと言い渡してあります。ですから彼らもチームメンバーの様子に細かく気を配るようになります。
また年に4回は全従業員と話し合うタウンホールミーティングを開催しています。シフトの都合で参加できない者が出ないよう、1回の話し合いを終えるまでに15回ミーティングを実施したこともあります。
秋間 この2年半の間、「今こそ前を向け」「長期ビジョンを描け」と言われても、その体力がある者はいなかったのではないでしょうか。しかし今はそれをやるべき時です。もう視線を未来に向けなければなりません。5年後、10年後のビジョンを描き、そこから逆算して今年はどうする、来年はこうするというロードマップを作らねばなりません。
ホテル業界としてはやはり人材問題から逃げるわけにはいきません。私自身、目の前のことで精一杯で、逃げたくなることもありますが、リーダーたる人たちが逃げていては始まりません。自分は定年になって、もうそこにはいないかもしれない未来のホテル業界に思いを馳せ、後輩たちが少しでも良い環境で働ける業界になるよう、今できることをする。私が総支配人である間に、花を咲かせるための土を作り水を入れることで、目に見えない土の中で立派な根が張ってくれればいいのだと考えています。
秋間 ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ総支配人の高良真理さんです。今までホテルで勤めてきたキャリアのなかで、他の業種への転職を考えたことはありますか。また、もし今そういった考えや悩みを持っている若手ホテリエがいたらどのような声を掛けますか。