九州最西端の島から世界に届くマーケティングを-CHAPTER WHITE 代表ホワイト美佳氏

  • 2022年7月15日

デスティネーションマーケティングのあり方とは
働き方の多様性・柔軟性を体現したい

-せとうちDMOでも仕事をされていましたが、成果はいかがでしたか。

ホワイト TXJを立ち上げる前のことですが、国の専門家派遣の制度を活用し、せとうちDMOへ派遣という形で仕事をしました。ただし、あくまで派遣なので、滞在費の補助はあっても家賃補助はなく、1週間以上同じ場所に滞在するのはNGというルールもあったため、1週間ごとにビジネスホテルを転々とする生活を続けました。東京の家は引き払い、まさに人生を賭けてコミットしました。

 いきなり外部から専門家として入ってきたわけで、DMOのメンバーに受け入れてもらうにも試行錯誤がありました。PRの仕事は成果が出るまで時間がかかり、最低2年から3年は継続しないと、その施策が合っているのかどうかも目に見えてきません。私の場合は1年半くらい経った頃に、NEW YORK TIMES に大きく瀬戸内の記事が載り、「これはお金では買えない価値がある」「これを狙っていたのか」ということが周囲に認められました。また、その頃からインバウンドの実績も上がり始め、風向きが変わりました。

-日本のデスティネーションマーケティングの課題は何だと思いますか。

ホワイト 「観光プロモーションは誰のために、何のためにやるのか?」という芯がはっきりしていないことが多いです。「地域振興」という言葉が誤解させているのかもしれませんが、最初から地域の全員がハッピーになろうとするので、目的がぼやけてしまいがちです。観光客が来て潤うのは、観光系や交通や飲食なので、まずはそれらの事業にしっかり収益を上げさせることを軸に考えればシンプルです。

 ハッピーのためにはプロセスがあるはずです。本来DMOは、その地域をプロモーションして事業者さんと地域の方々に潤ってもらうのがミッションなのに、なぜか予算の取り合いをしたり、一事業者の立ち位置になってしまっている。公的な視点を持つべきなのに、自分たちで稼ごうとしている点に違和感を覚えます。

 それは、観光地マーケティングの重要さが理解されていないということでもあると思います。ゴールから逆算したら自ずとやるべきことは絞られてくるのに、流行りに飛びついてSNSにばかり注力していたり、人が来ていないエリアなのにデータ分析ばかりしていたり。それならば人に来てもらう流れをつくるべきです。色々なものに忖度して本来の目的からずれてしまったり、違うゴールを作ってしまっているケースが多いように感じます。

-そのようなクライアントとはどのようにコミュニケーションを取るのでしょうか。

ホワイト デスティネーションマーケティングのあり方についての理解は様々なため、どんなことをすれば観光客が来るのか、また世に出るPR成果の価値が何なのかを、せとうちDMOで培った実績を基に説明しています。例えば、「広告」という言葉が添えられるだけでどれだけ記事の価値が下がるのか、といったことも含めてです。また、PRという仕事はメディアに記事を掲載してもらうだけではなく、常日頃からの情報交換やリレーション構築、それらを通じて得た信頼からなるビジネスパートナーシップの力が重要だということも理解してもらうべく努めています。

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