五輪や羽田枠拡大で飛躍、出国2000万人達成後は-年頭所感(2)

ジャルパック代表取締役社長 江利川宗光氏

  新年を迎えるにあたり改めて、悠久の時の流れに「切れ目」はなく、年号や暦は人間が人為的に時間に「区切り」を与えたものだということを考えた。しかし区切られ、名付けられた「時の塊」が、その瞬間に生きる人間の営みや世の中の動きに影響を与え、特徴づけていくことも事実だと思う。2020年は21世紀という長い時間軸のなかで、00年代や10年代、平成とは大きく異なる新たな時代と社会構造のスタートラインに立ったのではと感じている。ブレグジットなどの国際政治における変化や、年々激甚化する自然災害を見ても、そんな仮説を裏付けている気がしてならない。

 日本社会で言えば、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催や首都圏空港発着枠拡大による国際線の増便により、訪日外国人旅行者数4000万人の政府目標は早晩達成することになるだろう。外国人への新在留資格である「特定技能」の適用が今後拡大することも含めて、今後は日本が誇るおもてなしの心でお客様に対応するステージを超え、外国人を日常的な隣人として受け入れる覚悟が問われていると思う。日本と日本人が主体的・能動的に国際関係と外国人に向き合うことが求められる「新たな開国」の時代を迎えていると言って過言ではないのではないか。

 我々旅行業界についても、航空座席やホテル客室の供給の拡大、旅行市場のさらなる成長というチャンスがある一方、航空会社や宿泊施設によるダイナミックプライシング化の不可逆的な進行は、商品モデルや流通経路を大きく変えていく。また、AIなど新たなテクノロジーの進化や、予期せぬ新規プレーヤーの参入による競争激化に備える必要もある。

 自動車業界のように「100年に1度の変革期」かどうかは分からないが、旅行業界においても今後の5年から10年で大きく業界地図が変わることも考え、先を見通した経営が大変重要になってくる。ジャルパックも新たな時代の幕開けに際し、社員とともに「覚悟と備え」を新春のキーワードとして肝に銘じ、新しい年のスタートを切りたいと思う。

ANAセールス代表取締役社長 宮川純一郎氏

  昨年は旅行ブランド「ANAトラベラーズ」の誕生1周年を機に、「旅×イノベーション」をテーマとしてツアーマイルの導入やハワイ旅行用アプリ「A-NAvi」の提供を開始した。また「手ぶら旅行サービス」「ANAシェア旅」などの新サービスも続々と開始した。

 今年は東京オリンピック・パラリンピック大会の開催や、5Gの本格運用に伴う技術革新に加えて、ANAグループでは羽田の発着枠拡大に伴う国際線ネットワークのさらなる拡充を予定している。そのような環境のもと、羽田発の新規路線を利用した商品や、ANAのウェブサイトだけでなく旅行会社の店頭でも購入できるダイナミックプライシング型旅行商品を投入するなど、新たな商品やサービスの開発と導入に積極的に取り組む。

 我々は今年を「ANAトラベラーズ」の本格的な創業年と位置づけ、これまでにANAグループが培ってきた「安心と信頼の品質」に磨きをかけ、お客様に寄り添った新しい価値ある旅づくりに挑戦する。

東武トップツアーズ代表取締役社長 坂巻伸昭氏

  今年は令和になって最初の新年で、十二支の最初の子年でもある。子年は新しい運気のサイクルの始まる、未来への大いなる可能性を秘めた年で、しかもねずみは「子孫繁栄」の象徴だ。気持ちを新たに、幸先の良い1年にしたい。

 また、今年は中期経営計画「Challenge & Do」の最終年であり、待望の東京オリンピック・パラリンピック大会が開催される年でもある。オフィシャル旅行サービスパートナーとして大会の成功に寄与し、いかにレガシーを残していくかを考えて行動していきたい。

 当社ならではの取り組みとしては、大会期間中に「ホストタウン・ハウス」を設置し、交流が2020年を超えて継続するよう推進したいと考えている。これまで積み重ねてきた努力の成果を具現化するとともに、大会後についてはしっかり考える必要がある。

 昨今の旅行業界では、今までのビジネスモデルを追求するだけでは、生き残っていけなくなっている。これまでの枠にとらわれず、新しいことに挑戦し、事業の可能性を広げていこう。目標をを達成するためには、社員の1人ひとりが計画をしっかり立てて着実に実行していくことが重要だ。「昨年までに掲げた計画でやり残していることはないか」「2021年につなげるために何をすべきか」を考えて行動してほしい。

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