旅行会社は企画力と提案力の磨き上げを-JATA経営フォーラム

  • 2017年4月26日

テーマ性の高い独自企画で差別化
「旅の目的」を膨らませる提案を

市場を理解し、積極的な仕掛けを
お金のかからない付加価値も重要

 西山氏は3氏に対して、パッケージツアーを消費者に訴求するための「提案力」や「発信力」についても意見を求めた。はとバスの江澤氏は、バス旅行については料金が重視される傾向が強いこと、利用者アンケートからは「1時間あたり1000円が値ごろ感のある料金」などの意見が得られていることなどについて述べ、意識して商品造成や販売に取り組んでいることを説明した。

 朝日旅行の鹿野氏は、同社の顧客の約8割が60代と70代のシニア層で、リピーター率が77%と高いことについて述べた上で「お客様がツアーに求める質は相当高い。中途半端なテーマでは期待にこたえられない」との見方を示した。期待に応えることができた商品としては、美術や建築をテーマにした「美の旅」シリーズを挙げ、「単に美術館や教会を巡るのではなく、ストーリーが重要」と強調。「ある作品を鑑賞するために、あらかじめ他の作品を見ていただき、背景を理解していただくこともある」と説明した。

 そのほかには、現地の美術館に頻繁に問い合わせをし、作品の貸出状況などを確認していることなどもアピール。「コストがかかるが、こうした取り組みがお客様からの信頼につながる」と話した。

 前澤氏は、社員の提案力の強化を重視していることについて語り、各スタッフがGDSやホテル予約システムを使えるよう、専門の教育チームを社内に設けていることを紹介。「例えばフランスに行くお客様に、航空運賃だけではなく『この運賃ならこの時間に到着できる』というところまで提案することが重要」とし、「オンラインで完結せず、人間がヒアリングして柔軟に提案することが我々の価値」と語った。

日本橋トラベラーズクラブの西山氏 ディスカッションの最後には、西山氏が「提案力とは市場をしっかりと理解し、旅行会社の側から積極的に仕掛けていくこと」と定義。旅行者のニーズをつかんだ上で旅行商品を造成する必要性を改めて強調するとともに、「売上目標に縛られ、すぐに類似商品ができるような価格訴求型のツアーばかりになっていないか、(商品のラインナップを)今一度見直すべきでは」と話した。

 さらに、「どんなに良い企画でも旅行者に受けなければ仕方がない。そのためには価格設定が重要」と語り、「ビジネスクラスなどを利用して単価を上げ、ターゲットを狭めるのではなく、お金のかからない付加価値をどう生み出すかが、企画担当者の頭の使いどころ」と強調。「旅のクリエイティブプランナーとして、旅に行く手段を提案するのではなく、旅の目的を膨らませる企画を提案する必要がある」と語った。