観光立国実現に資する「おもてなし」とは-京都市主催シンポから

  • 2015年2月12日

改めて考える「おもてなし」の国際競争力
他国が真似できない次元に到達するには

守るべきは守り、変えるべきは変える

京都市長の門川大作氏 2008年から京都市長を務める門川大作氏は、「おもてなし」にかかわる問題として、特に京都などで顕著とされる「老舗商法」や「一見さんお断り」などの文化について言及。「閉鎖性を誇りにしているところもあるが、京都の伝統の凛とした部分については変えず、変えるべきところは相手に合わせて変えるべきでは」と考えを述べた。

 また、「京都はブランド力こそあるが、本当の姿をどれだけの人に知ってもらい、おもてなしにつなげられているかというと、まだまだだと思う」と述べ、今後はインターネットなどを活用して広く情報を発信していく必要性を強調。「口コミの批判などもしっかりと受け止め、それぞれが高め合っていく仕組みが必要」と訴えた。

 そのほか門川氏は、2020年に向けた同市の取り組みとして、小中学生が茶道や華道、着物の着付けなどを英語で説明できるよう、学校などにきっかけとなる場を提供していきたい考えを表明した。しかし本保氏は、未だに言葉が通じないことで外国人を避けたり、特定の分野で外国人へのサービスを断ったりするケースが散見されるとした上で、「子どもの教育だけで2020年に間に合うだろうか」と指摘。日本人の閉鎖性を根本的に改善していく必要性を示唆した。


要望に応えないこだわりも「おもてなし」に

星野リゾート代表取締役社長の星野佳路氏 「星のや 京都」など、全国で30軒以上の宿泊施設を運営する星野リゾート代表取締役社長の星野佳路氏は、「おもてなし」の定義については「分からないし、難しい」と述べ、「親切さや気遣いなどと定義すれば、外国人から『外資系ホテルの方が上だ』と反論されて負ける」と説明。既に世界中のホテルが、宿泊客のありとあらゆるニーズに応えるシステムを構築していることから、「ニーズに応えるだけではコモディティ化が進む。おもてなしとは、ニーズに応えるマーケティングを捨てること」と自論を展開した。

 星野氏は、千利休が豊臣秀吉を茶会に招いた際に、自分の屋敷の庭に咲いていた朝顔をすべて引き抜き、一輪だけを茶室に飾って見せた逸話を例に挙げ、期待されたものをあえて提供しないことも、日本ならではの「おもてなし」になりうると主張。「おもてなしのためには、伝えたいメッセージを持つことが重要」とし、実際に「星のや 京都」では宿泊客に目の前を流れる大堰川のせせらぎを楽しんでもらうために、客室にテレビを置いていないことを説明した。

 今後、日本の宿泊施設が訪日外国人旅行者を取り込むために必要なこととしては、「地域らしさや地域のこだわりを持ち、自信とともに打ち出すこと」と、「コモディティー化に埋没しないために、変えてはいけないところは変えないというこだわり」を強調。日本の「おもてなし」は、「マーケティングを捨てた時、外資系が真似のできない世界に入る」とし、その世界を訴求していかなければ、「世界に出ていくチャンスはない」と明言した。