正確な情報を迅速に、地域に求められる危機管理
HKTBリョン氏、観光復興には現地の安全確保が最優先
HKTBのリョン氏は、2003年に世界の観光産業に大きな影響を与えたSARSでの取り組みを紹介した。発生後、香港では4つのRのうちResponseとRecoveryに加えてReassume(再開)に焦点を当て、政治、財界、現地コミュニティーが一体となって、メッセージを世界に発信し続けた。特に発生後の早い段階では、観光産業の再開ではなく、現地の安全確保に取り組んだといい、「まずは、現地香港のコミュニティーが安心できる状態にすることを最優先し、その状況を冷静に世界に発信した」とリョン氏。
その後、回復段階に入ると、観光復興に向けた活動に優先順位をつけ、「香港は普通の生活に戻った。観光客が訪れても何も問題はない」という一貫したテーマで強いメッセージを発信した。同時に、有名人などの力も借りて国際イベントを開催し、香港をプロモーション。HKTBもキャセイパシフィック航空(CX)と共同で2ヶ月間の復興キャンペーンをおこない、観光客を呼び戻す取り組みに尽力した。
リョン氏は、そうしたSARS対策の経験を踏まえ、地域観光の復興には「情報の共有、地元のサポート、第三者機関の知識、ネットの活用が重要」という認識を示した。
これを受け、モデレーターの高松氏は「香港はWHOが安全宣言を出す前にいろいろと動き、再開に向けた準備をしていた。これが日本と大きく異なる点ではないか」と香港の事例を評価した。
HIS谷合氏、復興支援商品で被災地の早い回復を
HISの谷合氏は、SARS、米同時多発テロ、バンコク洪水などの際には復興支援商品を発売し、現地に観光客を送ることで現地の復興を後押ししたことを紹介。また、東日本大震災発生後には、食料や飲料水を被災地に運んだほか、被災地域で安価な海外旅行商品を発売し、被災者を元気づける活動もおこなった。谷合氏は「被災地の早い回復が旅行会社にとっても大切なこと」と話す。
このほか、バリでの爆弾テロの際は、急激に日本人旅行者が落ち込んだが、HISでは現地のガイドを整理することなく、回復までの準備として、日本語サービスの研修を続けた。谷合氏は「このおかけで、回復時期、弊社のお客さまの戻りは加速した。現在ではバリで一番多く日本人旅行者を取り扱っている」と明かし、回復時に向けた準備の必要性を説いた。