変化の波に乗れ、急速に変化を続ける世界への対応-WTTCより
会場からの質問
適正な課税価格と渡航情報の公平性
会場からも質問があった。航空税や入国税など、国から課せられている税金は高すぎないか、また、国が発する渡航情報の公平性を問うものである。
前者に関してはシルバーシーのドヴィディオ氏によると、かつてアラスカ州が港湾税をかけたとき、クルーズ船がまったくアラスカに行かなくなってしまった。これにより、政府は方向転換したといい、「消費者レベルでも何かできるはず」という。政府歳入としては必要なものであっても、「二重、三重に課税されているとなると結果的に収益が減少することになる」とヒルトンのナセッタ氏もいう。これには声を上げていくべきだ、と結論した。
後者の質問はケニア在住の参加者から寄せられたものだが、ケニアでは北部で事件が起こった場合、海外で「ケニア全体が危険である」と報道される。無関係であった地域へも旅行者が行かなくなり、そしてその情報は何年経っても上書きされることがないという。
これに対し、ナセッタ氏は「確かによくない対応である」とし、「これはコミュニケーションの問題。より透明性をもって密な情報をやりとりしなければならない」とした。BBCのロス氏は「政府側にも“ひとりの犠牲者も出してはならない”という責任上、ある程度はやむを得ない。完璧は無理」と理解を示しつつ、「一般大衆がどのようなことをリスクと考えているのかを理解し、バランスよくより良い情報を提供すること」と改善を訴えた。
どの時代も重要なのはコンテンツ
最後に登壇したのは、WTTC会長であるTUI会長のフレンツェル氏だ。これまで話されてきたグローバル化、エマージング市場への移行、デジタル化などに対して、旅行業界がどのように対応すべきかをまとめた。
ドイツのデータでは60%の人がインターネットの旅行情報サイトから情報を得ているという結果がでている。40%の旅行予約はネット経由で、この先50、60%と増えていくことも予想されている。すでに変化は始まっているのである。
生活を変えるのはオンラインサービスや技術的なプラットフォームだ。特に注目されているのは、人工知能を用いたサービスの開発である。人工知能により24時間体制で顧客と直接コミュニケーションをとることも可能になる。バーチャルリアリティもしかりで、旅行形態も変わってくるかもしれない。だが、それは新しいチャンスでもあるのだ。
変化をチャンスに変える方法は「コンテントプラス」戦略だ。コンテンツ、つまりホテルでもプロダクトでもそのサービスを強化し、広範囲な客のニーズに対応すること。どの予約形態であろうが、質をコントロールできればビジネス自体をコントロールすることができるということだ。どのような変化が訪れようとも、結局トレンドは実体験へと戻ってくる。その品質を向上するのである。また、人も変わりつつある。価値観も違っている。“主流”はなく、幾多のライフスタイルがあり、個人的なニーズに応えるプロダクトを提供しなければならないのだ。