変化の波に乗れ、急速に変化を続ける世界への対応-WTTCより
どんなビジネスも結局は“人”
観光産業ができること
当然のことながら旅行業界もグローバル化、そしてIT化に対応していかなくてはならない中、ツオゴ・サン・グループ副会長のマブサ氏は「ビジネスとは人が行なうもの。人が何を求めて旅をするか、ニーズに応えてそれを実現させる旅行業は最も“人”に近い産業だ」という。
メリア・ホテルズ副会長のエスカリア氏も「個人、社会、顧客すべてに耳を傾け、相手のことを理解して何が起こっているかを感じとり、持続可能性の高いニーズを掘り起こすことができる」と、“人”が主体となるべき産業であるという点で同意見を述べる。「テクノロジーは顧客を理解するために存在する」と断言し、まずはコミュニケーション、そしてデータ分析をすることによってより深くニーズを理解し、それに合わせて提案ができる企業が成功するという。
旅行業界に潜在する脅威もまた、「“人”つまり地政学に関係がある」とエスカリア氏は続ける。地政学的な不安定性がテロリズムにつながる可能性があるからだ。HNAグループ会長のフェン氏はこれに対し「経済が安定すれば人々の不安が払拭され、そうした脅威も減る」、グローバル・レジャー・パートナーズ会長兼CEOのハームス氏は「政府の動き次第でそれは世界経済に大きな脅威となりえる」という。世界経済は旅行業界に大きな影響力を持っており、観光産業もまた、世界経済への影響が大きいという相互作用であることから、根本的な問題はここに集約されるといってもよさそうだ。
若者が担う旅行業界の未来
明るい展望も
2回目のトークバックで興味深かったのは、「ハイエンド層向けの旅行は今が黄金時代」というスターウッド・ホテルのパッシェン氏の意見だ。世界人口のうち、20億人が中産階級に、超大金持ちは30%増えており、豊かな人が増えている。人々は常に新しい旅先を探しており、ホテルの建設も活発。海南島にはこの先3年間で16のホテルが建設されるという。
当然、質の高いサービスが望まれることは間違いないが、「新しいブランドの確立に最も必要なこともまた、ゲストサービスである」と、ダイヤモンド・リゾーツ会長兼CEOのクロベック氏が提言。多様化する顧客の要望に応えることがよい思い出を残すことになるといい、「観光産業で我々が作り得る最も重要な財産は思い出である」と話した。
高い満足度をめざすのなら従業員の教育は必須だが、「しっかりとした研修をし、地元のコミュニティに手を差し伸べてリーチアウトする。そうしなければ人材を確保することができない。毎年何千人、何万人と雇用しているが、追いついていない」と話すのは、ヒルトン・ワールドワイド社長兼CEOのナセッタ氏だ。新興国ではもちろん、どの国においても地域コミュニティの一部とならなくては持続することができないというのである。
旅行業に関する教育の重要性は、人口の60%を25歳以下の若者が占めるというインドではさらに大きい。ザ・インディアン・ホテルズCEOのビクソン氏は言う「教育を受けた若者はエアライン、ホテル、クルーズ船などどこでも働けるようになる」。国を超えて働くことも可能で、これもまたグローバル化の一端という。ただし、シルバーシー会長のドヴィディオ氏は「サービス業の一員となりたいと望む若者が多いのはインフラコストの高くない国」に目覚ましく、「欧米諸国ではすでにその倫理を失っているかもしれない」という。
とはいえ、スターウッド・ホテルのパッシェン氏は「ヨーロッパにはまだまだバリューがある」といい、クロベック氏も「次の投資先はギリシャ。すでに6つの建物を手に入れた」と話す。ゲストサービス面の進化は頭打ちでも、ヨーロッパはそれ自体に価値があると判断されているようだ。