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国内と海外、両輪で進める「和束茶」のブランド戦略-KYOTOyui 近藤芳彦氏

  • 2022年7月18日

「和束茶」と「宇治茶」の違い

 さて、ここから和束茶の話ですが、結論から言うとブランディングが出来てきたと感じております。と言うのも上記で書いた外国人観光客の動向が読めない今、着々と積み上げたことがこのコロナ禍でも結果を出しているのです。

 まず「和束茶」って何?と思われる方がいると思いますが、和束町は宇治茶の主産地で、京都府内の50%近くはこの町で作られています。和束町に「和束茶カフェ」というカフェスペースを備えた直売所が始まった2008年頃から、産地ブランドとして初めて売り出したお茶です。

 言い方を間違えないように気を遣うところですが、宇治茶は京都府産と他産地産をブレンドしたお茶なので、100%和束産というお茶は現地でしかほぼ買えない商品です。あまり知られていませんが、京都府茶業会議所では宇治茶について、「歴史・文化・地理・気象等総合的な見地に鑑み、宇治茶として、ともに発展してきた当該産地である京都・奈良・滋賀・三重の四府県産茶で、京都府内業者が府内で仕上加工したものである。ただし、京都府産を優先するものとする」と定義しています。実は宇治茶は、京都府内産100%ではないのです。

 また和束町のお茶は、ほぼ毎年、初市で最高値を付けており、今年も和束町産の手もみ茶が1キロ15万円の最高値で落札されたほどの高級茶です。その和束産100%のお茶を和束茶と呼びます。産地表示をご確認いただいたら良く分かりますが、宇治茶のほとんどが国産と表示されており、産地は明確に記載されていません。

和束茶カフェのブランディング

 その和束茶の直売所である和束茶カフェでは、新茶の時期である毎年5月が一番の売上を出す月なのですが、2020年5月はピーク時の2018年より9割ダウンしていた売上が、2021年5月はピーク時の5割、そして今年5月はピーク時の106%と、過去最高となりました。一方で来館者数はピーク時の73%にとどまっておりますが、客単価が上がっている結果です。オンラインでの販売も行っていますが、売上としては一部で、多くが来店での売上です。

和束茶カフェの店内

 和束茶カフェは開業以来、PR活動に全力で取り組んできました。各農家も独自で百貨店や関西圏のスーパーなどで販売を行いまたし、5月にはリーガロイヤルホテルと連携してフェアーも開催しました。弊社でも、京都市内のホテルや飲食店に個別や団体でご案内したり、三越伊勢丹での販売を独自で行い、和束茶というブランドと産地を知ってもらう取り組みを進めました。こうした地道な活動が口コミで広がり、町自体もメディアで毎年取り上げられるようになり、ブランドの知名度が上がったと考えています。

 現在の主要な顧客層は国内のお茶好きのお客様ですが、少しずつ海外にも広がり始めています。世界からインターンシップを受け入れている京都おぶぶ茶苑という地元企業が、インターン生が自国に帰った後、アフターフォローとして海外に出向き、和束茶の販売を行ったことで、海外でも徐々に名前が知られるようになってきました。

 また、和束茶カフェでは、店を起点としたツアーや体験などの販売も積極的に行っており、町の観光拠点の役割も担っています。今後はインバウンドの再開に向けて、外国人旅行者にも楽しんでもらえるコンテンツを改めて強化していくようです。

カフェスペース

 最後にお伝えしたいのは、同じ京都府内である京都市については前述の通り厳しい状況が続いてはいるものの、和束町では和束茶のお陰で国内市場だけでも順調な動きがあるということ、そして国内客をターゲットにしていたザ・リッツ・カールトン沖縄も同様、コロナ前以上の高水準を出されているということです。インバウンドが戻りだす頃には、直ぐにコロナ前の売上水準を超える時期が来ると私は考えております。

近藤芳彦
KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。京都観光おもてなし大使。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です。