国内の宿泊予約取扱額が回復、出張や現地体験予約が過去最高に-じゃらんフォーラム 2022

  • 2022年7月6日

リクルート、全社体制で観光DX化推進

 リクルートはさきごろ開催した宿泊事業者向けの「じゃらんフォーラム 2022」で、国内旅行が回復しているとの見方を示した。現況やじゃらんの方針を示した上で、地域活性化に向けた講演のほか、各地域ごとに宿泊施設を表彰するじゃらんアワードも実施。同フォーラムは大阪を皮切りに全国8ヶ所で行われ、東京会場では約400人がリアルに集まった。

顕著な実績を収めた宿泊施設や地域を表彰する「じゃらんアワード」の発表もおこなわれた。写真は関東・甲信越ブロックの受賞者

3年ぶりの開催で2年間の変化を共有

 今回じゃらんフォーラムが3年ぶりに開催した背景として「明るい兆しや役立つ情報を共有することで観光業界の復興を支援したい」と旅行Division長の宮本賢一郎氏は説明。リクルートは2021年に旅行事業を含む子会社を経営統合しており、宮本氏は今後の方針として、旅行部門だけでなくリクルート全体で領域を超えたサービスを提供していくと明らかにした。

「マーケットの潮目が変わってきた」と話す宮本氏

 宮本氏によると、じゃらんnetの予約取扱額は2021年末にはコロナ前の2019年比で100%前後に回復。「キャンペーンがない状態で回復したことで、消費者の旅行意欲の顕在化が確認できる」と分析した。2022年4月以降も、4月6日にはGoToトラベル期を除いた予約件数、5月5日の取扱高が過去最高と好調で、要因としてテレビCMやオンライン決済のキャンペーンによる効果を挙げた。

 出張予約はリモートワーク普及で回復が遅れているものの、大手企業の利用もあり、21年度下期にはコロナ前と同等の人泊数に回復したという。 2021年度には利用企業数が2万1000社を超え、2022年4月には月間人泊数が過去最高になった。遊び・体験の現地消費も、果物狩りやウォーターアクティビティが牽引し、2022年3月に月間予約件数が過去最高となったという。

旅行回数を増やして地域消費額増加へ

 じゃらんは今後、地域消費の活性化に注力する方針で、総旅行回数を増やすことで地域の消費額増加を目指すという。その実現のために挙げたのが「じゃらん版観光DXの提供」「デジタル消費の増加」「現場を知り、データを活かす提案」の3点。なかでもじゃらんによる観光DXは、情報収集から予約、現地消費までを可視化した統合データを地域や事業者へ提供し、収集・分析した消費データを観光戦略に役立ててもらうのが狙い。

 すでに、神奈川県箱根町、新潟県妙高市、山梨富士吉田市と包括連携協定を結び、決済サービス導入によるキャッシュレス化はじめ、予約者に周辺の観光情報を配信して消費を促進する実証実験もおこなっているという。さらに、じゃらんのDXでは事前の情報収集から予約手配、現地での情報提供や決済まで一つで完結するワンストップサービスも目指す。

 リクルート全体として提供する業務支援の第一弾がキャッシュレス決済サービス「Air PAY」となる。QRやポイント、クレジットカード、交通系電子マネーなど最大36種に対応したマルチ決済サービスで、リクルートとしては国内外で進むキャッシュレス化への対応、DXのデータ蓄積のためにも観光業界のキャッシュレス化を推進する意向だ。22年度中にはじゃらんアプリにコインプラスというQR決済サービスが搭載されることも明かした。

 このほか、地域における新しい取り組みとして、地域回遊を促す「ご当地体験」施策を開始した。三重県伊勢市の夫婦岩では訪問後すぐに地域外に出てしまう課題があったが、絆結びというストーリーを設計し、現地体験と組み合わせて発信している。じゃらんは今後も地域消費活性化の施策に力を入れていくとした。