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ニューヨーク市観光局、影響力の大きい旅行者を誘致、未知の旅行会社との連携にも注力

  • 2022年7月13日

長期滞在で地域と関わる影響力の大きい旅行者を重視
パッションポイントに訴求できる旅行会社とネットワーク構築へ

 ニューヨーク市のツーリズム・マーケティング機関、ニューヨーク市観光局(NYC & Company)は今年4月に新たな日本総代理店を任命しプロモーション活動を始めた。本局のツーリズム・マーケット・ディベロップメント マネージングディレクターのマキコ・マツダ・ヒーリー氏と新しく日本市場の旅行業界とマーケティング担当となったアカウントディレクターの山田隆氏に、コロナを経た変化と今後の方針について話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

ニューヨーク市観光局ツーリズム・マーケット・ディベロップメント マネージングディレクターのマキコ・マツダ・ヒーリー氏(左)とニューヨーク市観光局日本オフィストレード・マーケティング担当の山田隆氏(右)
-それぞれの役割を教えてください。

マキコ・マツダ・ヒーリー氏(以下、敬称略) ニューヨーク市観光局のマネージングディレクターとして、ツーリズムマーケットの市場開発を統括しています。専門は新しいマーケットやカスタマイズが必要なスペシャリティマーケットの開発です。入局して20年になりますが入ってすぐに9.11が起き、クライシスマネジメントは初めてではないという自負もあります。

 パンデミックの間、海外の17オフィスを一旦閉鎖しましたが、現在は15拠点あります。重要なマーケットのひとつである日本に新しいアプローチをしていくため、今回、ラグジュアリーやニッチマーケットの経験のある山田さんにお願いしました。

山田隆氏(以下、敬称略) これまでパプアニューギニア政府観光局や、アリラホテルズ&リゾーツ、カペラホテルズ&リゾーツなどの5つ星ホテルのレップをやってきて、ニューヨークのような日本人が多く訪問している、またメジャーな観光局は初めてですが、これまでの経験がニューヨークのためになればと4月から日本総代理店として旅行業界と一般旅行者を含むマーケティング全般をおこなうことになりました。

-コロナの前と後で取り組む施策に変化はありますか。

ヒーリー コロナの前に戻すというより、前よりもエキサイティングで優しいニューヨークを目標にしています。これからの集客は、人数を集めるのでなく、より影響力の大きい旅行者を誘致したいと考えています。これは消費額が多いだけではなく、長く滞在し、コミュニティと関わり、サステナブルなあり方に価値を見出す訪問者のことです。そのために、ネイバーフッド(地域)体験を押し出し、ダイバーシティ&インクルージョンやエクイティ(公正)という視点で、誰もが歓迎されていると感じるデスティネーションを構築したいと考えています。

-何泊以上を長期滞在と見ていますか。
ヒーリー氏。インタビューはニューヨークからオンラインで実施

ヒーリー ビジネスも含めた2019年の日本人の平均宿泊数は5.9日で、旅行パッケージツアーは4~5泊ぐらいです。ネイバーフッドで過ごすためにもニューヨーク滞在を1日でも多くすることを目指してます。

-旅行者を惹きつけるために何か必要でしょうか。

ヒーリー 今の不安定な状況でも旅行したい人に働きかけるにはパッションポイント(情熱を傾けられる興味関心)に語りかけることが必要だと思います。 「これをやりたい」「あれを体験したい」などニューヨークでないといけないポイントです。オミクロンがピークのとき、あるスポーツ大会に大きなグループが来ましたが、まさにパッションポイントがあったと言えるのではないでしょうか。

-「これができるからニューヨークに行く」と思ってもらえるポイントはありますか。

ヒーリー サステナビリティです。まだ具体的な商品に落とし込んではいませんが、例えば建築から食事まで徹底したサステナブルにこだわった「1 Hotel」、植林活動をするバスツアー会社「アマデオ」などの先進事例をネットワーク化し、環境に配慮し、コミュニティに寄り添った旅行を実現していきます。

 アクセシブルツーリズムについても、オーナーが車椅子ユーザーのペルー料理の有名レストラン「コンテント」がハーレムにあり、フリーアクセスがコンセプトになっています。こういう人や地域に注目することがコミュニティエンゲージメントにもつながります。