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OTOA、アフターコロナの危機感と可能性の両面を語る

 日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)は6月8日、第31回通常総会を開催するとともに、大畑貴彦会長ら幹部役員が記者会見し、アフターコロナの海外旅行を巡る諸問題についてツアーオペレーターとしての意見、見解を述べた。

左から田中純一副会長、荒金孝光副会長、大畑貴彦会長、遠藤洋二専務理事

 徐々にではあるが動き出した日本の海外旅行について、大畑会長が最大の問題として挙げるのが、グローバルスタンダードと乖離した日本の商習慣により現地手配が機能不全に陥ることだ。OTOA会長就任以来11年間にわたって訴え続けてきたというのが支払い・精算のグローバルスタンダード化で、後払い・立て替え払いなどのいわゆるクレジットが主流の日本の商習慣を世界標準に合わせるべきとの主張だ。

 日本の旅行会社と現地サプライヤーとの間に立つツアーオペレーターは、この支払と精算のタイムラグによって生じる負担に悩まされてきた。大畑会長は「コロナ前の19年までは各社が企業努力で何とか乗り越えてきた。それは仕事があったからこそ。ところがこの2年半は仕事が何もない。その一方で、コロナ禍を経て現地側のグローバルスタンダード化がさらに進んだ結果、海外旅行再開後にはわれわれの負担が一段と増すことになる」と危機感を露わにする。

 たとえばアジアでは、コロナ禍を経てホテルは半年ないしは1年前からのデポジット要求がスタンダード化し、キャンセルチャージの厳格化も進んでいるのに加え、「バス会社も早く資金を回収したいのでクレジットはなくなっており、レストランもゼロではないが同様の傾向だ」(大畑会長)とのこと。一方で日本の旅行会社は、支払いのグローバルスタンダード化を進めているケースはあるものの、主流はまだ日本式の後払いだ。

 間に入り立て替え払いを余儀なくされるツアーオペレーターの苦しい立場について田中純一副会長は「日本の国境が開かれるのは歓迎だが、海外旅行が再開しても体力のないツアーオペレーターは1年から1年半の間に退場を迫られかねない。われわれにとっての支払・精算条件がきつくなることはグローバルスタンダード的にも企業的にも、もう物理的に無理。海外旅行手配の会社がいなくなれば海外旅行はできなくなる」と訴える。ツアーオペレーターの多くは中小零細企業で資金力が豊かとはいえないだけに、コロナ禍によるダメージと、コロナ禍によって一段と進む海外のグローバルスタンダード化の影響が重なると、深刻な事態を招きかねない。

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