業界ニュースを振り返る ー JTB意地の黒字化と楽観的な予測

 日曜日昼の12時時点でトップ10のうち半分がJATA・ANTAの退会記事や旅行業抹消の記事と人事記事でなかなか今週はこのコーナーが書きにくい週です。しかしやはり、皆さんの一番気になる記事はJTB決算のようでした。

 連結決算でついに黒字化を果たしたことは良いことだとはもちろん思います。その一方でこれはJTBの意地の黒字化なのであろうということも感じました。JTBのニュースリリースにわかりやすい表がありますが、営業利益は利益率などが非常に改善されているとは言え、未だに48億円もの赤字です。まだコロナの影響がなかった2018年の営業利益が51億円だったことを考えると、他の数字の桁の大きさに認識を誤りそうになりますがかなり大きい損失です。

 もちろん、このコロナにより需要が激減した中でこうなることはJTBの実力不足などでは全然ないでしょうし、経常利益と純利益をこのタイミングで黒字化にする手腕は素晴らしいことだと思いますが、そもそも2017年から2018年にかけてもJTBは営業利益を大きく減らしていましたし、当然自社ビルの売却という切り札はもう使えません。これからの旅行需要の回復と、その中でのシェアの確保というのがより重要になろうということが想像できますが、実際のところ旅行需要がどのタイミングでどこまで戻るのか、ちっとも想像がつかないというところが正直なところでしょう。

 ここ2年ほど、色々な団体がその都度適切と思われる確度の高そうな旅行需要の回復予測を出してきたわけですが、知る限り当たっているなというものはありません。だいたいは悪い方向に外れていきます。そんな中、航空会社からのコミッションも期待できないこれから、仮に海外旅行需要がもどっても旅行会社需要がどこまで戻るのか……そう考えるとJTBの予測はかなり甘めな気もします。ましてや、経験豊かなスタッフもリストラや転職で減ったあとでしょうし、需要が戻ってきても決して楽な道ではないでしょう。

 デジタルプラットフォームなどにも言及されていますが、私見では今の所デジタルコンテンツでJTBが大成功した事例は私が知る限りはありません。そこらへんは技術力がものをいうのでしょうが、世界的にここらへんの技術をお持ちの方への報酬は非常に高いですし、規模に応じて人数も必要です。傷みに傷んだ旅行業界にはなかなか厳しい投資となるでしょう。中小企業であればニッチどころで勝負するという手もありますが、JTBほどの企業であれば王者の戦略で勝つしかありません。しかしこれから勝てる旅行業界の王者の戦略はなんなのか……私ごときには想像もつきません。