百戦錬磨から独立、宿泊・賃貸・滞在を融合し新たな宿泊の選択肢を提供-リアテクノロジーズ代表 橋野宜恭氏
橋野 コロナ禍前は9割近くがインバウンドで、2020年1月に中国人が来なくなった後も他のアジアの方々が来ていましたが、緊急事態宣言の頃はほぼゼロ稼働でした。日本人を集客するため、外国語表記が主だったOTAサイトや自社サイトの日本語ページをマーケティングの観点から徹底的に見直し、海外からの帰国者の自主隔離向けランディングページを作ったころから日本人のお客様のご利用が増えてきました。
当社全体の利用者数で見ると、2019年に7棟開業したことにより、同年11月の利用者数は同年4月比で1.8倍になったものの、その後のコロナ禍でほぼゼロに転じました。GoToトラベルキャンペーン開始後も、最初の1〜2か月間、民泊区分の施設はGoToトラベルキャンペーン対象の主要OTAに掲載ができず市場に遅れを取っていたのですが、2021年は当社の利用者数が前年の2倍超と市場トレンドを上回り、ビジネスホテルやバジェットホテルのシェアを奪ったとみています。
橋野 コロナ禍前のADR(平均客室単価)が約2万円だった大阪駅近くのホテルでさえ、今はまだ平日6000円台で販売しているホテルも多くあります。18平米の3つ星、4つ星ホテルも7000円台と回復していない状況ですが、当社の客室は35平米前後と大きい分、周辺ホテルより高めの平日8000円台、週末1万円前後で売れています。
当社のRevPAR(販売可能な客室1室あたりの売上)も2021年12月には2019年8月並に回復し、周辺の3つ星ホテルと比較しても高くなっています。今はインバウンドがなく、国内宿泊客だけということもあり週末と平日のギャップが大きくなっています。
橋野 駅近で築古のマンションは新法民泊でハイブリッド運用することによりサブリース業者等に賃貸運営を任せるよりも手残りを増やせますし、新築マンションを旅館業に適合するように建てれば、長期滞在を獲得できる分、ホテルとして建てるよりも低リスクで運用できます。こうした運用ができるレジホをもっと増やしたいと思っています。
現在は東京、大阪、京都で展開していますが、特区民泊の適用範囲が市内全域の大阪に比べ、大田区のみの東京は施設が比較的少ないです。既存の物件を住宅からホテル、またはホテルから住宅に用途変更することは難しいので、墨田区では新築マンションを建築基準法上はホテルとして建設し、旅館業法の許可を取得して運用してる例もあります。これらの経験を基に、今後はもっと都内を深堀りしていきたいです。オーナーは投資先として宿泊施設よりも居住用不動産を選ぶ傾向があるなか、レジホに興味を持つ方もいて、レジホ運用・ハイブリッド運用の大きな流れが来るのはこれからだと思っています。
橋野 もちろん受け入れていきます。市場の集合知は意外と正しいと思っており、今年の秋以降の予約は海外からも多く入っている状況を見ると、あと1年ぐらいでインバウンドは回復してくるのではないかとみています。
もっとも、国内需要だけで稼働率が8割を超えている施設もあるので、今の状態が5年続いても国内需要のシェアを高めていけばよいという心構えでやっています。当社の事業は民泊でスタートしましたが、民泊ランクに拘らず、上のクラスのADRを狙いたいと思っています。