訪日ハイエンド獲得のカギは専門性と口コミ、世界に遅れず国境再開をーKANAZAWA TOURS マイク・キーナン氏

  • 2022年4月20日

西洋的視点のガイドトレーニングで富裕層を囲い込む
訪日旅行者に「ポストコロナの旅行スタイル」はない?

 金沢で訪日富裕層向けツアーを営むKANAZAWA TOURSは、アイルランド出身で健康工学分野の博士号を持ち、金沢をこよなく愛するマイク・キーナン氏が手掛ける異色の旅行会社だ。「日本のガイドにがっかりした」体験がきっかけで始めたビジネスでハイエンドな顧客の獲得に至った工夫とは。訪日外国人目線でのポストコロナの旅行スタイルへの考えも聞いた。

キーナン氏。インタビューはオンラインで実施した。

-まずはご自身の経歴とKANAZAWA TOURS についてお聞かせください。

マイク・キーナン氏(以下敬称略) 私はアイルランド出身で、元々は石川県の北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で働いており、健康工学の分野で博士号を取得しています。金沢を観光しようとした際に大変な思いをしたのが、KANAZAWA TOURSを立ち上げたきっかけです。

 当時は英語のガイドを探すのも一苦労でしたが、やっと見つけてもセリフを読み上げるような一方通行の会話で、まるで歴史の授業を受けているようでがっかりしました。たまたまミスマッチだったのだなと思い、もう1回ツアーに申し込んだら、全く同じような体験をしました。そこで「誰かが金沢が必要としているものを提供しなければ」と思い至り、自らビジネスを始めました。

 まずはウェブサイトを立ち上げてマーケティングを開始し、自分自身でガイドをしました。ですが、日本文化に造詣が深くない私は良いガイドとは言えません。そこで、外国人向けにガイドを行っている方へのワークショップやトレーニングを始めました。

-具体的にどのようなトレーニングを行ったのでしょうか。

キーナン まずはストーリーテリングやエモーショナル・インテリジェンス、西洋的な視点でのカスタマーサービスに関するワークショップなどを開催しました。問題は、ガイドが国内市場向けに訓練されていて、外国人が何を求めているのか、どのようなガイドを希望しているのかを知らないことでした。そこで、ツアー終了後にお客様とガイドにインタビューして、理解や認識にミスマッチがあった場合に改善していく取り組みも実施。こうして半年から1年で、とても優秀な人材が育ってきました。

 最初はウォーキングツアーから始めて、その後ドライブツアー、数日間のツアーへと拡大していきました。主に金沢や高山、白川郷、京都など、アクセスしやすい小都市を取り扱っています。はじめはターゲットを絞らずにお客様を探していたのですが、地元ならではの専門知識を活用することで、より高いレベルのマーケットを獲得することができました。そこでハイエンド層に焦点を絞ったところ、大成功を収めました。

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