まちづくりは「よそ者・馬鹿者・若者」京都和束町の事例-KYOTOyui 近藤芳彦氏寄稿

  • 2022年4月13日

空き家対策の一環で民泊の推進

 和束町には宇治茶の主産地という強み、そして修学旅行などのゴールデンルートである京都と奈良の間にある地域として、立ち止まって頂ける観光コンテンツや買い物などがあれば団体客が見込め、さらに受け入れ出来る体制づくりができれば集客は十分に可能だと思っていました。

 そこで、和束町でも課題になっていた空き家の有効活用として民泊を推進していくことにしました。空き家のオーナーさんと交渉をし、2015年4月に第一号、2016年8月に第二号の民泊ができました。

 宇治茶を求める観光客へのピーアール活動をおこなうと同時に多くのメディアにも取り上げられたこともあり、国内外のファミリーを中心に和束町の民泊で宿泊をしていただく観光客が増えていきました。さらに宇治茶摘みのシーズンにはそこでアルバイトをする若者が宿泊しており新たな層の認知も広がりました。

世界スカウトジャンボツリーでの受け入れ体験

世界スカウトジャンボツリーで計600人を和束町に誘客

 京都府では、地域の課題解決のため住民と協働して新しい社会づくりを進める「まちの公共員」を募集しており、2014年から2年5カ月の間、職務を務めておりました。当時ご縁があって「世界スカウトジャンボリー」のスウェーデンの子供たち600人ほど受け入れる事になり、和束町及び南山城村・笠置町の施設にも協力を依頼しました。

 20~30人ほどのグループ毎に和束町の家庭で1泊ずつ滞在してもらうのですが、英語を話す町民の方が少なく、不安もあったのですが、滞在後に町民の方にお話し聞くと、「子供たちと過ごすことが楽しい」「受け入れをもっとしたい」「受け入れを続けて欲しい」などの前向きな意見が多く、その後の修学旅行の受け入れの基礎となったと思います。そのほか観光収入という地域に実益をもたらしたことも受け入れに前向きになった要因のひとつだと思います。

 本格的に団体の受け入れ体制を作るため、一般財団法人和束町活性化センターと連携し、受け入れ家庭へのお願いや、和束町へ来ていただくための交通機関との連携などの整備したり、滞在中の体験やサプライズなどの準備しました。その後、2015年には台湾からの女子高生36人の受け入れや、奈良県からの小学生40人の受け入れに成功します。

町民の方の理解

ヘリコプター茶畑ビューイングツアー in和束

 私がまちの公共員に就任したころに、蛍を見るツアーを実施し大型バス1台のお客様をお連れした後のことですが、地域の方から「町が荒らされる!」や、「こんな小さな町にバスで来られると困る!」などの声が出たのです。また、お茶のトップシーズンである桜が咲くころからGWまでの期間にヘリコプターで和束町の遊覧飛行を実施しようとしていました。町民の方からは騒音の心配など不安な声があがっていました。

 町民の方の理解なしには「まちづくり」は成功はしません。蛍を見るツアーやヘリコプター遊覧をおこなうことで、観光客がどれくらい増加するか、また経済効果がどれくらい上がるのかを、町民の方はもちろん、議員、商工会役員などにも理解を求め、何度もディスカッションをしました。また、蛍を見るツアーでは、自然を壊さないよう橋からの配慮した観覧をおこなったり、ヘリコプター遊覧はなるべく騒音が最小限に抑えるための試験運行をしました。

 そして「近藤くんが頑張ってるから応援する」と言っていただく方も増え、蛍を見るツアーやヘリコプター遊覧も実施することができました。このように「まちづくり」には観光に対してしっかり受け止め理解してくださる「人」がいてこそ成功するものであると思います。

まちづくりは「よそ者・馬鹿者・若者」

 このようなことをおこなった結果、地域に経済効果を上げることができ町民の方に認めてもらい、それが私の通信簿のようなものだと思ってます。それも全ては観光事業で多くのお客様に来ていただくことが出来たからです。そしてリピーターに繋がる地域の方のおもてなしが素晴らしく、そのお陰で私も胸を張ってお客様を呼ぶことができました。

 まちづくりは「よそ者・馬鹿者・若者」と言われますが、まさしくその馬鹿者が私で、町民の方に怒られながらも愛ある接しかたでご対応いただきました。宇治茶の主産地と観光業者の私とコラボレーションすることで、とても良い効果を生み出すことができました。

 この事例はどの町でも置き換える事が可能だと思っており、何度かお伝えしている「人」そのものが資源であり、その資源をどの様に観光と掛け合わせるかで「まちづくり」が出来ると考えています。そういった意味でも観光事業者は無くてはならない存在だと思いますし、観光は経済効果を生み出すことができる産業だと思います。

 次回は和束茶についてお伝えしたいと思います。

近藤芳彦
株式会社KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。京都観光おもてなし大使。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です。