【発行人コラム】まん延防止全面解除、今こそ観光産業が試される

 3月21日をもって「まんぼう」が全面解除となりました。

 22日にさっそく夜の街(東京)に繰り出したのですが、極寒かつ停電の恐れが伝えられていた割には、人出はそれなりに有りました。

 知人の飲食店経営者数人に話しを聞いたところ、先週中頃から予約の数は目に見えて増え、3月の残りの1週間は悪くて6割、日によっては満席との事です。

 「まんぼう」解除とは直接関係は有りませんが、今月は海外(英国、シンガポール、オーストラリア)在住の友人知人(日本人)が相次ぎ帰国し、4月にはフィンランド人の知人夫婦が仕事で来日します。また、直接の知人で海外へ旅行・出張中の人も数人いますし、4月の初旬にはJATAの海外視察団もハワイへ旅立つようです。

 今回こそは(昨年末、一度期待を裏切られていますが)間違いなく大きな転換点だと思います。

 仮に今後感染の再拡大があろうとも、再び極端な人流制限は行われないでしょうし、人々のマインドが再び強い自粛ムードに戻ることも無いと思われます。

 海外に目を転じると既に、国内旅行は活況を呈し、規制の緩和による海外渡航復活も顕著となっている国も多く、日本は一歩も二歩も遅れているとは言え、この潮流から大きく外れることは外交上も難しいと考えます。

 既に業界内ではグローバルOTAが日本の動きの鈍さに業を煮やし、日本市場の優先順位を下げることも検討していると聞き及びます。

 この転換期に我々観光産業がどう対応するか、そこに産業の未来がかかっていると言っても過言では無いでしょう。

 久々の需要に舞い上がり、あいも変わらず採算度外視の価格で顧客の奪い合いをするなら観光産業の再興はあり得ません。

 GoTo再開時に便乗値上げ(補助を相殺した消費者価格を踏まえ、定価を引き上げる)して不当な利益を得ようとするなら、早晩消費者から見限られるでしょう。

 国内に遅れ数ヶ月程度で戻り始めると思われる海外需要に関しても同様で、仕入原価の高騰を自らの利益を圧縮することでカバーしようとするなら、コロナによる傷を更に深めるだけの事になるでしょう。

 特に中小規模の事業者は自社が提供する価値に見合う適正な価格設定、それを可能とする他社との差別化、顧客の選別と言った基本に今こそ立ち返る時です。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、32周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​