フジドリームとスカイマークのトップが「空の旅」の課題と可能性を議論-就航地連携観光サミット
神戸空港を基点に関係人口の拡大を
ひょうご観光本部は、みなと銀行との共催で「就航地連携観光サミット」を開催し、基調鼎談として、神戸空港に就航するフジドリームエアラインズ(JH)とスカイマーク(BC)のトップが航空ネットワークを活用した「空の旅」の課題と可能性を議論した。モデレーターを務めたひょうご観光本部理事長の高士薫氏は「観光ニューノーマルのキーワードして、関係人口や第2ふるさとづくりが挙がっているなか、神戸空港を基点としてローカルtoローカルの空の旅を考えていきたい」とし、このセミナーの意義を説明した。
神戸空港は現在、国内12空港と結ばれており(2022年3月からは13空港)、そのうち8割がBCとJHによって運航されている。このうち、JHは、信州松本、高知龍馬、青森、花巻の各路線を運航。3月からは新たに新潟路線を開設し、5路線1日12便に拡大する。
一方、BCは、2006年の神戸航空開港に合わせて羽田に就航。その後、那覇、新千歳、仙台、茨城、長崎、鹿児島、宮古などに路線を拡大し、現在、西の拠点として8路線1日24便を運航している。
直近の需要状況について、JH代表取締役社長の楠瀬俊一氏は「コロナの影響で乱高下している。現状はまだ厳しく、黒字基調にはなっていない」と説明。2020年の4月から5月にかけて3週間ほど全便運休を余儀なくされ、搭乗率も2020年5月は8.6%と低迷したが、緊急事態宣言解除後の2021年11月には54.4%まで回復した。しかし、年明けから第6波によって再度需要が激減し「2月は一番苦しいのではないか」との見通しを示した。
BCも状況は同じで、2019年3月から需要が下がり始め、一時は前年比93%減にまで落ち込んだ。2021年11月には利用者数が16万人を超え、搭乗率も65.3%にまで回復したものの、第6波の影響は大きく、1月、2月と厳しい状況が続く。それでも、BC代表取締役社長執行役員の洞駿氏は「3月からは回復に向かうのではないか」と期待をかけた。
また、両社は、それぞれの地域活性化の取り組みについても紹介した。BCは、特別塗装機ピカチュウジェットを利用した「空とぶピカチュウプロジェクト」を展開。洞氏は「ポケモンが人と人、人と地域を結びつけるプロジェクトで、コロナ禍でもお客さまに喜んでもらえる攻めの施策」と説明した。ピカチュウジェットは2021年6月から沖縄路線を中心に運航されている。
さらに、2021年末には茨城路線の認知度向上を図る目的で「いばらきHappyキャンペーン」を展開した。対象地域は茨城県内に加えて、栃木、群馬、千葉、埼玉、福島南部。キャンペーン効果は大きく、予約が増加。これを受けて、BCは今年3月の夏ダイヤから神戸/茨城線を1日3往復に増便する。洞氏は「これからも地域に密着した様々なキャンペーンを展開し、ただの移動ではなく、就航地の人たちや自治体などと協力して、就航地の魅力を提案することで、リピーター需要を創出していきたい」と意気込みを示した。
一方、JHは、自社の認知度向上のために「神戸リピーターキャンペーン」を展開。これは、神戸発着同一区間を5回搭乗、あるいは神戸発着路線のいずれかに10回搭乗で片道無償航空券をプレゼントするもの。楠瀬氏によると、現在のところ140人が申し込み、年代では40代、50代が多いという。
また、コロナを乗り越えるキャンペーンとして「GO TRIPキャンペーン」も開始した。これは、行き先不明のプランで、福岡と名古屋発着の日帰り、宿泊付き乗り放題、遊覧飛行などを提供するもので、「新しい飛行機の旅のカタチを楽しんでもらう」(楠瀬氏)。さらに、青森の魅力を発信する目的では始めた「うまいぞ!うまいぞ!青森」では、その日に大間で水揚げされたマグロを、JHの旅客便でJHの社員がその日のうちに自宅に届ける。
地域と地域との直接交流の促進を
将来に向けては、BCの洞氏は「リピーターをいかに増やして、ファン層を熱くしていくかが、路線の安定につながる」との考えを示し、例えば、仙台の楽天イーグルスと神戸のオリックス・バッファローズとのファンの交流会や学校交流などを挙げて、「いろいろな繋がりが可能だろう」と話した。また、利用者の半分以上が初めて乗る旅行者であることから、できるだけ多くの新規客を発掘するためにも、「各路線の特性を洗い出した上で、ニーズに合った施策を展開していく」と強調した。
JHの楠瀬氏は、「東京を中心とした放射線状の人の流れではなく、地域と地域が直接交流が深められるようにすべき」と発言。神戸空港を拠点にBCとの協業の可能性にも触れ、「点と点の路線ではなく、路線全体を面として捉えるような交流ができれば、人の流れにバリエーションが出てくるのでは」と提案した。
このほか、ひょうご観光本部の高士氏は、神戸市と就航地との関係性を強めるために、「観光アンバサダー」という取り組みを紹介した。これまで実施したモニターツアーで落選した人たちも含めて、リピーターになりやすい人たちをアンバサターとして登録。一方、就航地のDMOでも同様の制度を設けてもらうことで、誘客送客の関係を深めてくいく。高士氏は今後について「全国の地域とのネットワークをさらに強めていきたい」と将来を見据えた。