豪州の「今」を駐在員の視点から-進む「コロナ共存」 社会活動、経済活動の正常化へ邁進
事実上の国境閉鎖により入国を厳しく管理、それにより世界的に見ると新型コロナウイルスの封じ込めに成功し、「新型コロナウイルス・ゼロ戦略」を取って来たオーストラリアですが、2021年後半にかけてワクチン接種率が飛躍的に向上。対コロナ戦略を新規感染者数から重症者数及び死者数へ重きをおく「コロナ共存」へと方向転換しました。2月21日には全世界のワクチン接種完了者に対し、約2年振りに国境がオープンされます。「新型コロナウイルス・ゼロ戦略」から「コロナ共存」へ、この大きな戦略転換の要因となったワクチン接種の状況、そしてオーストラリアの今をレポートします。
※本稿は2月11日時点の情報です。
オーストラリアの現在の感染状況
市中感染者及びその調査下にある人数(過去24時間) | 現在感染者数 | 累計感染者数 | |
---|---|---|---|
オーストラリア全体 | 29,440 | 256,794 | 2,462,729 |
オーストラリア首都特別区 | 500 | 2,380 | 40,076 |
ニューサウスウェールズ州 | 10,130 | 136,087 | 993,813 |
ノーザンテリトリー準州 | 1,161 | 7,411 | 26,767 |
クイーンズランド州 | 5,854 | 39,088 | 342,748 |
南オーストラリア州 | 1,632 | 14,528 | 120,167 |
タスマニア州 | 637 | 937 | 15,714 |
ビクトリア州 | 9,391 | 55,946 | 921,401 |
西オーストラリア州 | 135 | 417 | 2,043 |
本稿執筆時点で、市中感染陽性者並びに陽性疑いのある調査中下にある人数は、過去24時間で3万人弱となっており、「新型コロナウイルス・ゼロ戦略」時代が遠い過去のことのように思えます。ただし、最も人口の多いニューサウスウェールズ州の新規陽性者数の人数は1月10日前後をピークに、2番目に人口の多いビクトリア州も1月7日前後をピークに右肩下がりとなっており、様々な規制緩和による新規陽性者数の急激な増加は、歯止めがかかったと言える状況です。
また、3番目に人口が多く、これまで国内でも特に厳しい新型コロナウイルス規制を敷いてきたクイーンズランド州は、1月15日以降オーストラリア国内からの入州に関しては一切の規制を撤廃したことにより新規陽性者が急激に増加しましたが、2月10日前後を境にピークは過ぎたと言われています。
逆に、未だ厳しい入州制限を敷き、現況のオーストラリアで唯一と言えるほど事実上の「新型コロナウイルス・ゼロ戦略」方針を継続している西オーストラリア州の市中感染者数は、他州と比べ非常に限定的となっていますが、今後の推移に注意が必要と言えるでしょう。
ワクチン接種率の向上
1回の接種が完了した人口比率 | 2回の接種が完了した人口比率 | ブースター接種を受けた人数 | |
---|---|---|---|
オーストラリア全体 | 95%以上 | 93.9% | 9,727,513 |
オーストラリア首都特別区 | 95%以上 | 95%以上 | 207,155 |
ニューサウスウェールズ州 | 95%以上 | 94.2% | 3,102,923 |
ノーザンテリトリー準州 | 90.8% | 87.6% | 76,660 |
クイーンズランド州 | 92.3% | 90.2% | 1,731,257 |
南オーストラリア州 | 94.0% | 91.3% | 692,562 |
タスマニア州 | 95%以上 | 95%以上 | 210,354 |
ビクトリア州 | 94.4% | 93.1% | 2,624,633 |
西オーストラリア州 | 95%以上 | 93.3% | 1,017,632 |
2022年2月10日現在:Australia Government Department of Health(Australian Immunisation Register and self reported data)
オーストラリア国内での新型コロナウイルスの感染抑制が成功したことも影響し、ワクチン接種開始当初、接種は遅々として進まず、開始から5ヶ月が経過した2021年7月末の段階で、接種回数は全豪で約1,200万回、2回の接種を完了した数は成人の約15%に留まっていました。ですがニューサウスウェールズ州での感染拡大、ビクトリア州、オーストラリア首都特別地域やクイーンズランド州での市中感染の発生、ロックダウン措置への突入など、デルタ株の猛威を受けたことによりワクチン接種のスピードが増し、2021年8月中旬には全豪で4日間のうちに100万人がワクチン接種を受けるに至りました。
その後、連邦政府による規制緩和に向けたワクチン接種率の目標値の設定、各州におけるワクチン接種者に対してのみの規制緩和の発表、また一定の職種においてはワクチン接種が義務付けられる州も出てきたことなどから、接種のスピードは更に向上。2021年10月1日の段階で16歳以上の2回のワクチン接種率は55%でしたが、2ヶ月後の2021年12月1日の段階では87.2%に、2月現在は93.9%まで上昇しています。
2回のワクチン接種率の向上に伴い、連邦政府はブースター(3回目)接種の奨励を進め、2回目の接種とブースター接種の期間を5ヶ月、4ヶ月、3ヶ月と徐々に短縮。1月29日にはそれまで18歳以上が対象であった年齢を16歳以上へと変更しました。2月現在ブースター接種を受けた人数は全人口比の約40%弱となっています。
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