熊野古道の宿泊施設不足に挑むー日本ユニスト 山口和泰氏、大崎庸平氏

日本の将来は地方の経済が創る
高齢化・人口減少下の地域創生を可能にする無人運営

-コロナ禍の影響を教えてください。
SEN.RETREAT TAKAHARA 室内

山口 高原での開業を2020年4月から2021年10月に延期したことが一番大きかったです。しかしオープン以降は週末中心に予約が入っており、昨年11月、12月も比較的よく埋まりました。今年の第6波の影響は感じていますが、需要ゼロという最悪の状況を想定して事業計画を立てているため、11月、12月はむしろ良い結果でした。1月は和歌山県民対象の「わかやまリフレッシュプラン」が延期となった影響もあり、予約がゼロでした。しかしプランがまだ再開していない現在も翌月以降の予約が入っているので期待が持てます。

 完全無人運営のスタイルは感染症対策面でも強く、田辺市も不安が少ないエリアと認識されているので、コロナ禍でも強みがあります。

大崎 2年以上もコロナ禍が続いているので、それを前提に動いています。1月に仕込んだマーケティング施策の結果、2月から4月の稼働率が30%を現段階で越えており、コロナ禍でも旅行ニーズは確実にあり工夫すればお客様は動いてくれると感じています。

-アフターコロナのインバウンド戦略についてはどうお考えですか。

大崎 熊野古道は歴史や宗教との関わりを感じながら巡礼できる世界遺産として海外の旅行者が体験価値を認めているので、インバウンドに対して何かを仕掛けていく発想は現段階ではありません。先ほどもお話した通り、今は国内に向けて魅力発信に努めたいと思っています。

-その場合の対象エリアはやはり関西地域ですか。

大崎 現在の施策は関西対象ですが、2棟目を開業するタイミングで東京の市場も狙っていきます。実際飛行機を使えば、大阪から車で来られる方より移動時間が短く、商圏として捉えることが可能です。

-観光産業関係者に向けてメッセージをお願いいたします。

大崎 コロナ禍で宿泊も旅行も厳しい状況ですが、我々は無人運営をうまくデザインすることで集客を図れると考え、挑戦しています。「コロナ禍だからもうダメ」ではなく「コロナ禍でも工夫すれば旅行業界を盛り上げられる」と思っており、確信を得ています。皆さんと一緒に観光を盛り上げるために頑張っていきたいと思います。

山口 日本の将来は地方の経済が創ると考えています。我々も地方で勝負していますが、単体では抗えない高齢化や人口減少といった問題があります。その中で模索した結果、辿り着いた答えが無人運営でした。地方経済のキーワードは無人運営であり、それを熊野古道で実践していることに我々の価値があり、魅力があると思っています。これから地域、地方で事業を展開する方々には、リファレンスモデルとして情報公開していきます。宿泊施設の計画や運営に関する話を聞きたい方や地域間連携を考えたい方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見やご提案をお寄せください。

-ありがとうございました。