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熊野古道の宿泊施設不足に挑むー日本ユニスト 山口和泰氏、大崎庸平氏

日本の将来は地方の経済が創る
高齢化・人口減少下の地域創生を可能にする無人運営

 総合不動産デベロッパーでホテルの開発・運営も手掛ける日本ユニストが、世界遺産・熊野古道の宿泊施設不足問題に取り組んでいる。高齢化と人口減少が進行する地域での宿泊施設運営という難問に対して同社が出した答えが、無人運営施設という新発想だ。プロジェクトを統括する山口和泰取締役と事業責任者の大崎庸平課長に発想の原点や運営状況について伺った。(聞き手:弊社常務取締役 藤原久記)

-まず日本ユニストについて説明してください。

山口和泰氏(以下敬称略) 日本ユニストは2011年5月設立の不動産総合デベロッパーです。「付加価値の高い不動産を提供することで社会に貢献する」を経営理念に、未だかつてない新しい価値を世界に提供するために、リスクを取り挑戦し続けています。このマインドに従って展開している3つの事業が、不動産総合デベロッパー事業、ホテル開発・運営事業、熊野古道プロジェクトです。

 ホテル・開発・運営事業としては都市型ホテルの運営を行っており、市場の変化により将来価値が上がる地域を選んで施設を建てるだけでなく、地域の特色を生かしたホテルを開発し、自社オペレーションする「Willows」ブランドも展開しています。現在、大阪・新今宮のWillows Hotel大阪新今宮と大阪・此花区のWillows Minpakuの2軒があります。

 熊野古道プロジェクトは、高齢化が進む熊野古道エリアにおける宿泊施設不足の問題に着目し、宿泊施設開発により熊野古道エリアの観光産業の持続可能性の確立に寄与するのが目的です。

-お二人の自己紹介もお願いします。
山口氏。インタビューはオンラインで実施した。

山口 2019年11月にIT系企業から日本ユニストに移り、不動産事業のDXを担当することになりました。情報戦略室や経営情報管理部を立ち上げ、2021年5月に取締役に就任。現在はバックオフィス業務全般と情報システムおよびWillows事業等を管轄しています。

大崎庸平氏(以下敬称略) 外資系コンサルからテーマパークのマーケティング担当を経て2021年10月に入社しました。現在は大阪に移住し、SEN.事業部で熊野古道に係る事業の責任者としてマーケティング、オペレーション、ファイナンスなどを幅広く見ています。

-昨年10月に地方創生を理念に掲げた、町宿「SEN.RETREAT TAKAHARA」を、熊野古道の参詣道「中辺路ルート」沿いに開業しましたが、その背景と経緯を教えてください。

山口 弊社の代表今村亙忠が、プライベートな食事の際にたまたま同席者から熊野古道の宿泊施設不足について聞いたのがきっかけです。そこで今村が調べると、熊野古道の巡礼やトレッキングは何日もかけて歩き続けて成立するにもかかわらず、途中の1施設でも予約できなければ断念せざるを得ないことや、それにもかかわらず宿泊施設が不足していること、現地では高齢化や事業継承者不足もあり宿泊施設が減少する一方だという実態が分かりました。そこで中辺路ルート沿いに複数の宿泊施設を建て、転泊可能な体制を整えれば、安心して熊野古道を楽しめる環境作りに貢献できると考えたわけです。

 我々が現在、解決を目指す問題は2つです。1つは宿泊施設不足と減少傾向への対策。これは既に顕在化している問題です。もう1つは、当たり前のこととして受け入れられてきた潜在的な問題、繁閑差に起因する問題です。熊野古道は、オフシーズンとなる真夏は旅行者が激減するためビジネスの成立が難しく、雇用や地域経済も安定しません。これを解決して地域に新たな価値を生み、地域経済を作っていくのが最終的なゴールです。

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