夢をあきらめるな! 新潟から地域航空の可能性を広げるートキエア代表取締役 長谷川政樹氏
低運賃で「トキモデル」の確立を
人材派遣や観光開発による収益確保も
長谷川 トキ・アビエーション・キャピタルは、オペレーション事業としてトキエアの立ち上げや運航を行うほかに、パイロットなどの人材育成・派遣事業も行っていきます。現在、日本では日本人の民間パイロットが不足している状況で、2030年にはバブル期で入社したパイロットのリタイアも始まります。一方、自衛隊パイロットは55歳で定年を迎えますが、その後の民間への転身では国土交通省の免許取得で苦労している現実があります。そこで、規制緩和の議論を進め、自衛隊パイロットの民間転身などを支援しています。
地域航空は規模が小さいので、パイロット1人が休むと欠航につながってしまいます。他の地域航空会社と連携すれば、パイロットの融通も効くようになるので、大手の傘の下での競争ではなく、地域間の連携も目指したいと考えています。
また、地方創生・デスティネーション開発も事業の柱の1つです。地域と連携して、就航地で魅力的なまちづくりを支援し、空港を核とした産業振興や観光開発などを進めていきます。空港は搭乗者だけでなく、他の利用者が集まるような場所にしていく必要がある。例えば、シンガポールのチャンギ空港は観光地化しています。それくらいのインパクトを持って、空港を活性化していかなければいけないと思っています。
このほか、航空事業の会員制ファンコミュニティの運営も行っています。例えば、佐渡の魅力をPRしながら、佐渡と東京とを往復するような需要を生み出せば、関係人口のきっかけ作りにもなると思います。離島は医療体制が脆弱ですが、東京から50分で佐渡に行けるなら、医者の派遣なども改善するのではないかと思っています。
地域航空を継続的に支えることはチャレンジです。それを支えていくためにも、航空事業以外で収益を上げていくことが重要だと考えています。
長谷川 ATR72-600は、1晩で座席を貨物コンテナに切り替えることが可能です。すでに欧州では認可を受けている機材で、我々は貨物需要も取り込みたいと考えていたことから、この機材の導入を決めました。閑散期には74人乗りを42人乗りにして、需要が低い時は貨物だけで稼げるようにしていきたいと思っています。
コロナは大きな勉強の機会になりました。ただ耐えるのではなく、打ち勝っていくために必要なことを学びました。この機材の選定にはそうした背景もあります。また、災害など緊急時にも活用の幅は広がるでしょう。
機材自体は大きくないので、運ぶ貨物は、軽くて付加価値が高いもの、あるいは時間が経つと価値が下がってしまうもの、緊急性があるものを想定しています。生鮮食料品や医薬品などが中心になるのではないでしょうか。
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