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【発行人コラム】航空券やJRの販売を止めた旅行会社

「足」を売らないという選択

 旅行の2大要素は足と枕ですが、今年になってから「航空券やJRの販売は止めることにした」と3人の旅行会社社長からお聞きしました。

 理由はコミッションが無い(あっても雀の涙)、人件費に見合う手数料をお客様から頂けない等、コロナ前から顕在化していたものと、出入国規制やフライトキャンセルに対応して旅程や見積を作成しても、延期やキャンセルが多く、手間は数倍になっているのに収入は僅かと言ったコロナ禍特有のものに分かれます。

 そして共通するのは、コロナが収束しても収益性は改善しない、むしろ更に悪化するとの想定で、これが最大の理由のようです。

 もちろん、ただ「足」の販売を止めるだけでは無く、皆さんそれぞれ新たなサービスや商品を打ち出そうとしています。

●地方都市の国内観光系旅行会社
地元の強みを活かし、体験や食を軸に最適な宿・二次交通を組み合わせた現地発着ツアーに絞る
手配代理業から企画造成会社へ

●海外系中堅旅行会社
航空券は売らず、安全・時間・価格等、総合的に最適なフライトスケジュールの作成と予約代行の対価として手数料を徴収し、実際の購買は顧客が航空会社サイトやOTAにて行う形へ移行
航空券販売からコンサル(旅程作成・予約代行)へ

●業務渡航専門小規模旅行会社
取引先企業から法人カード決済、社用費用に付帯する航空会社のマイルを含む各種ポイントの管理と運用を請け負い、出張旅費等費用削減を推進し対価を得る
旅行会社からコストカット支援へ

 このような他社の判断や取り組みを聞いたときのありがちな反応は「そんなの絵に描いた餅、上手くいくはずが無い」なのだろうと思います。

 しかし、コロナが収束しても大半の旅行会社の業績は戻り切らないのはもはや共通認識、にもかかわらず何もしないよりは遥かにましな行動だと思いますし、新たな挑戦により会社毎のスペシャリテを確立することこそ、消費者の多様なニーズに応える術となるのでは無いでしょうか。

 代替案を示さない「やらない、やれない理由」には耳を貸さず、「やれる、やるべき、やろう」を今こそ大事にしたいものです。

 先の3社の新たな挑戦が結実することを心より願っております。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​