日本のOTAは復調傾向か、今後の注目は「メタバース」-WiT JAPAN 2022
じゃらん:地域の需要喚起と業務支援の2本柱で展開
続いて、柴田氏が各社の2021年の成果と課題について掘り下げる質問を実施。これに対し、じゃらんの宮田氏は昨年成功した施策の1つとして、地域とのDXに関する包括協定を締結したことを述べた。リクルートは直近では昨年12月、新潟県妙高市と観光DXを目的とした包括連携協定を締結し、「地域消費分析プラットフォーム」構築のための実証実験を開始している。その一方、宮田氏は「需要回復の遅れもあり、攻めの投資が思い描いていた通りにいかなかった」と振り返った。
今後は引き続き地域との協業による需要喚起に注力する方針で、若者層向けの「マジ☆部」やスキーなどのアクティビティの強化もめざす。加えて、宿泊施設などのクライアントの業務支援も継続する。
なお、リクルートでは昨年3月末に海外旅行検索・比較サイト「エイビーロード」のサービスを終了したところ。宮田氏は「個人手配は増えると思っている。じゃらんと統合して引き続き展開していきたい」と話した。
このほか、柴田氏はリクルートの人材系サービスが好調であることから、旅行領域への経営資源の配分について懸念を示した。これに対し、宮田氏は「グローバルレベルのHR事業のテクノロジー加速はあるが、国内事業は大きい変更はない。国内旅行市場を見ても、旅行意欲がある人は7割で、需要は回復するだろう」と話し、「旅行への投資を減らすことはないだろう」と語った。
楽天:エコシステムの成果でシェア拡大、フィンテックの活用へ
楽天については、高野氏が楽天トラベルの楽天経済圏(エコシステム)の成果で、旅行業界内でのシェアが飛躍的に増えていることを説明。国内旅行の宿泊数ベースで市場の2割以上のシェアを獲得できているとし、理由として楽天グループのEC事業・金融事業が好調で、その顧客が楽天トラベルを利用していることなどを述べた。
また、旅行事業のグローバル展開について「今は厳しい状況なので、まず国内旅行の復活に資源を投下している」としながらも、「3年から5年後を考えると、旅行サービスのグローバル化をマルチカントリー、マルチリンガルで拡大していきたい」と話した。まずは日本人が多く訪れるアジアのアウトバウンドに力を入れるとともに、国内旅行での国内宿泊施設の連携を活かし、インバウンドも拡大していく方針だ。
パネルディスカッションでは柴田氏が、カナダで航空運賃予測・ホテル予約アプリなどを提供するホッパーが「トラベルフィンテック」を活用して急速に伸びていることを説明し、楽天のフィンテックの活用に関する方針を質問。これに対し、高野氏は楽天グループ内のフィンテックサービスとの連携を考えていることを説明。パートナー向けのBtoBの金融商品の開発も検討しているという。
一休:パーソナライゼーションに注力
一休は、巻幡氏が21年はパーソナライゼーションに注力したことを説明。宿泊エリアの検索をより細分化するとともに、「フリーワードで気持ちよく利用できるようサジェストして検索できるようにした」と語った。同氏は例として、1名で札幌エリアを検索する場合はサウナや大浴場を求めるが、箱根の場合は露天風呂付きの夕食を求めているとし、「消費者の検索意図を理解した上で、絞り込み条件をダイナミックに勧めている」と話した。
また、同じグループのYahoo!トラベルについては「ダイナミックパッケージもやっているが、足元の状況から国内宿泊をUI・UXを含めてきちんとやっていこうと力を入れた」と振り返った。