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特色の維持と効率化、両立のナローパスに挑む-エア・ドゥ代表取締役社長 草野晋氏

  • 2022年1月14日

ソラシドエアとの共同持ち株会社設立へ準備を進行中
国内・国際チャーターに手応え

-現在の運航便数の状況は。

草野 19年度と20年度の比較では運航便数で6割、搭乗客数で3割でした。21年度上期も大部分が緊急事態宣言あるいは蔓延防止等重点措置の対象期間だったため、運航便数が8割、搭乗客数も4割にとどまりました。しかし10月1日に緊急事態宣言が解除されて以降は回復傾向が顕著で、10月は運航便数で9割、搭乗客数で7割。11月は運航便数10割、搭乗客数8割まで回復しました。ロードファクターも60%を超えるようになりました。もっとも単価はコロナ前より低下しているので、収入ベースでの回復は便数や客数ほどには戻っていません。

-札幌市が道民以外も利用できる宿泊割引キャンペーンを実施していますが、その効果は。

草野 緊急事態宣言解除後の路線別動向を見ると、札幌/東京路線の回復が一番早いのは明らかです。キャンペーンの効果によるものか分析はしていませんが、事実としてその傾向が見られます。

-NHとのコードシェア便については今後、拡大を目指すのか自社運航便の拡大を目指すのか、どちらでしょう。

草野 現在はコロナ禍の危機克服を最優先課題として、ソラシドエアとの共同持ち株会社の設立に集中的に取り組んでいる最中です。今後の路線展開については、当面はコードシェア便も含め現状維持が基本方針です。ただしアフターコロナは需要が変化する可能性があり、将来に向け少しずつでも新たな取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。

-コロナ前に国際チャーター便を運航しましたが、搭乗客や地元の反応、地元経済への効果はいかがでしたか。

草野 コロナ禍が本格的に始まる直前の2020年2月に実現したのが帯広/台北のチャーター便でした。国際線がない帯広から海外へ直行できるチャーター便は手間も時間も節約できるため、その快適さが好評を博しました。同様のメリットは道内の他の地域に対しても提供できるものと自信を深めています。

 国際チャーターは暫くの間は運航が難しいと思いますが、台湾や香港といったメジャーな目的地だけでなく、極東ロシアや東北中国等、開拓されつくしていないエリアも視野に入れて取り組んで行きたいと考えています。極東ロシアについては2020年5月に関空/ユジノサハリンスクのチャーターを準備していましたが、コロナ禍で中止になってしまいました。

-コロナ収束後の国際チャーター便に関しては、北海道発着が中心になりますか。

草野 北海道の翼としてできる限り北海道を拠点にしていきたいのですが、課題は目的地の開発です。運航した実績がある目的地も限られます。ですから当面はデスティネーション開発を進めるためにも、ニーズがあれば北海道発着にこだわらずにチャーターを実施したいと思います。

 現在は国内チャーターを中心に取り組んでおり、11月には帯広三条高校の修学旅行に帯広/広島・神戸のチャーターを運航しました。修学旅行のチャーター便はエア・ドゥが地域に貢献できる取り組みでもあります。12月2日出発だったのでロコンジェット北海道の機材を使用し、特別な思い出作りをお手伝いしました。

 この取り組みを通じて、修学旅行はチャーター便の利用価値が高い分野だと感じました。最寄り空港から目的地へ直行できるため時間を節約でき、全校一体での移動が可能で、感染症予防の観点からも部外者が混ざらず安心感があります。また当社は中堅航空会社として唯一、中型機と小型機を保有しており、288人乗り機材と144人乗り機材を使い分けられるため、1学年の人数が多い学校にも対応できます。ローカル経済への貢献と言うほどではないミクロのレベルですが、航空会社として地域貢献できる分野だと確信しました。

-定期便の乗り継ぎ便利用に比べて費用面も抑えられるのでは。

草野 比較はしていませんが、人数に合う機材を選べる意味では費用を最適化できる可能性が高いと思います。

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