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旅工房と日本旅行が合弁会社でZ世代攻略へ、旅の楽しさを伝えることが使命-ミタイトラベル代表 舩渡川氏

  • 2021年12月8日

「失敗したくない」がZ世代の価値観
若者の旅行離れを止めるにはZ世代へのアプローチが必要

 旅行業界にとって、次世代市場のカギを握るとされるZ世代。この重要市場の攻略を掲げ、旅工房と日本旅行が共同出資して10月に立ち上げた合弁会社がミタイトラベルだ。同社の代表取締役社長の舩渡川崇氏に新会社の事業構想や市場攻略の勝算について聞いた。

ミタイトラベル代表取締役社長の舩渡川崇氏
―舩渡川社長の自己紹介をお願いします。

舩渡川崇氏(以下敬称略) 旅工房の新卒採用1期生として2002年に入社したので、20年間にわたり旅行業に携わってきたことになります。入社当初は社員数も十数名の時代で、初めは営業を担当していましたが、会社が第1種旅行業を取得してからはグアム担当となりリーダーまで務めました。

 その後、07年には名古屋支店を立ち上げ、そのまま支店長になりました。本社に戻ってからは当時社内の“お荷物”的な部署だったアジアセクションを任されました。ここで業績をV字成長させて、アジアセクションを5課体制に拡大しました。2019年には執行役員となり、昨年からは執行役員を務める傍ら立教大学大学院でMBA取得を目指して勉強しています。

 そして、今年8月にミタイトラベルの社長就任の打診がありました。私としても旅工房に入社して20年目でしたし、少し前に40代にもなっていたので、これが人生の節目のチャンスだと感じて社長の話を受けました。

―ミタイトラベル設立の経緯についても説明してください。
旅工房代表取締役会長兼社長の高山泰仁氏(左)と日本旅行代表取締役社長の小谷野悦光氏(右)

舩渡川 4年ほど前、航空券の取引があるフレックスインターナショナルの営業担当者様より、日本旅行の経営陣の方をご紹介いただいた事がきっかけとなり、「一緒に何かできないか」という話が出ていたようです。そこからミタイトラベルの構想につながっていったわけですが、互いの得意分野が異なっていたのが大きいポイントでした。また旅行のお手伝いで培ってきたお客様の思いに寄り添う社風が似ていた事も合弁会社設立に至ったポイントだと思っています。

 日本旅行は、明治38年創業の日本で最も伝統のある総合旅行会社であり、客層は幅広いが比較的年齢層が高くファミリー層以上がベース。JR西日本グループであり国内仕入に強みがありました。一方の旅工房は海外旅行主体で客層も20代・30代の個人旅行者が中心で比較的若い年代に強い特徴がありました。両社で若者向けの取り組みを共同で取り組んでいこう、と検討を開始しましたが、コロナ禍となったことで、これからの旅行需要や若者の価値観の変化などを考えながら入念にコンセプトを設計してきました。

 新会社の狙いはZ世代と言われる若い世代を取り込むことですが、とくにコロナ禍の現状では当面、JR西日本の国内セットプランを若い世代に認知させ販売することがミッションとなっています。Z世代には、そもそも鉄道の旅という旅の形態そのものが選択肢に入っていないのが実態です。鉄道の旅は、実は安い、実は効率がいい、実は楽しいといった点が十分に伝わっていないのが課題で、JR西日本や日本旅行からも、若者の認識を変えるために頑張ってほしいと言われています。

―旅工房側から見たミタイトラベルへの期待は。

舩渡川 旅工房も国内旅行に取り組んでいますが、最大のネックはJRの予約と、JAL/ANAの国内線予約です。また宿泊予約も、ホテルはまだしも旅館に関しては苦労しています。OTAも海外ホテルには強いですが国内の宿泊施設に関してはなかなか思うようにはいかないようです。ところが日本旅行は全国の何千軒もの旅館と契約があるので、その中で若者向けの施設をミタイトラベルで取り上げて販売できればと考えています。日本旅行としても若者向けの販売促進に苦労している面があり、互いに補完し合えると思います。

 また旅工房としてはインバウンドへのプラス効果も視野に入れています。国内宿泊施設やJR、地方自治体に対する関係性をミタイトラベルで作っておくことができれば、今後訪日旅行需要が復活した際に旅工房のインバウンドビジネスにもプラスの作用があると期待しています。旅工房の海外支社から訪日客を呼び込むための基盤を作っておきたいということです。

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