7割が海外客だった京町家旅館、ミレニアル世代に支持される理由とは
SNSを通じたイベントで若年層にリーチ
サービスのキーワードは「おせっかい」
大門 一番突き抜けた例は結婚式ですね。昨年コロナで挙式ができなかったというお客様がいらっしゃり、サプライズでスタッフ全員が集まった部屋にお呼びして、人前式を行いました。
椿通でのファッションショーのイベントも、「若い人たちへのチャンスのおせっかい」という解釈です。また宮崎では、もともと全く宿のなかった地域で古民家を再生して宿を作りました。その後新しく飲食店もでき、稼働も好調ということで、来年にはJR九州が古民家を使った宿をオープンすることになっています。
大門 私たちは「おせっかい」を通じて世の中を作っていこうと考えていて、それを「おせっかい革命」と呼んでいます。仲間の幸せとお客様の感動を追求し、人と人とのつながりを作るという理念です。
「おせっかい」は人間関係を生みます。我々の宿では「おせっかい」を通じて、お客様から日々たくさんの手紙をいただいています。メールなどではなく、直筆のメッセージです。
「おせっかい」には3つの定義があると考えています。1つ目は相手が嬉しく思うことを妄想すること。2つ目は勇気を持つこと。おせっかいは一方的で、拒否されるかもしれないので(笑)。3つ目は「私」が主語になるように行動することです。通常、宿のサービスは「宿が」○○をする、ですよね。ですが我々は、「私が」サービスをすることで、人間関係ができるわけです。
大門 引き続きSNSには注力し、今後はTikTokにも力を入れていきます。イベントも定期的に開催し、旅行には行かないけれどもイベントなら行くという客層も捉えていきたいと思っています。
宿だけで楽しむ世界から、地域丸ごと「おせっかい」によって人間関係ができるような世の中へ、というのが次のフェーズです。京都には似たような宿泊施設がたくさんあり、リピーターになりにくいエリアと言えます。唯一リピーターを作るのは人間関係で、施設に行くのではなく、○○さんに会いに行こう、という動機です。Nazunaでも何度も訪れてくださるお客様もいらっしゃいますが、宿に紐づいているというよりは、人に紐づいているのではないかと思っています。
大門 事実は1つですが、解釈は無数にできます。コロナ禍という状況はありますが、我々はそこに関してはポジティブです。コロナのおかげで時間ができて、組織改革もでき、イベントにも注力ができ、SNSにも強くなれ、新しい出会いもありました。ネガティブに受け取るか、ポジティブに受け取るか、解釈の仕方はとても重要ではないかと改めて感じています。