観光産業のためのLGBT基礎知識Vol.3 ~アトランタで開催されたIGLTA総会をレポート~

2年ぶりの開催に22ヶ国約400名が集結
LGBTのワクチン接種率の高さや旅行意欲にも注目

 今年1月からお送りしている「観光産業のためのLGBT基礎知識」。Vol.1では大阪で開催した日本初の「LGBTQツーリズムコンファレンス」を、Vol.2では京都のLGBTQムーブメントについてご紹介しましたが、今回はアトランタで開催されたIGLTA年次総会(グローバル・コンベンション)のレポートをお届けします。

IGLTAとは

 IGLTA(国際LGBTQ+旅行協会)はLGBTツーリズム普及のため、1983年に米国で創立された旅行業団体です。世界80ヵ国にわたって2,000を超える旅行会社やホテル、航空会社などが加盟しています。LGBTマーケティングの貴重な情報源となっており、旅行商品を企画する際のホテル選定にも多大な影響を与えています。日本国内でも多くのホテル、旅行会社などが加盟しています。そのIGLTAの年次総会である「IGLTA 37th Global Convention」が、今年の9月8日から11日まで、米国のアトランタで開催されました。昨年の大会はコロナ禍の影響で中止となっていましたので、2年ぶりの開催です。

IGLTAグローバル・コンベンションin アトランタ

 海外渡航ということで、新型コロナウイルス感染予防策が気になるところかと思いますが、このコンベンションに参加するにあたり、PCRの陰性証明書ならびにワクチン接種証明書の提出が義務付けられており、期間中も会場でPCR検査やワクチン接種が行なわれていました。私は安心して参加することができました。

 やはりコロナ禍の影響で例年よりも参加者が少なかったのですが、それでも22ヶ国から約400名のIGLTAメンバー(観光局、航空会社、旅行会社、ホテル)がアトランタに集結し、LGBTQの旅行トレンドや旅行意識調査発表などのセミナーや、各種ネットワークイベントが開催されました。私は大阪観光局様と一緒に参加しました。

 LGBTQのリサーチ会社「CMI」が全米のLGBTQに実施した旅行に関する意識調査の発表がとても興味深かったので、一部、ご紹介します。

 たいへん印象的だったのは、米国のLGBTQの90%以上がワクチン接種済であるというデータでした。その理由は、・よりリベラルだから、・学歴が高く、医療科学への理解も深い、・コロナ禍のロックダウンで孤立感を感じていて、早くワクチン接種してレストランやバーに行きたいと願う人が多かった、といったことでした。「バケーション旅行に行けないうっぷんがたまっている」と回答した人は78%に上りました。

 旅行先としては、約8割が「LGBTQフレンドリーな旅行先を選ぶ」と回答しており、あらためて「LGBTQウェルカミング」の重要性がはっきりしました。GB男性は都会を求める傾向、LB女性は自然を楽しめる旅行地を求める傾向が高いことがわかりました。

 ひとくちにLGBTQと言われますが、単一の"LGBTQ旅行者”などいないということ。都会に住んでいるゲイカップルと、リタイアしているレズビアンカップル、22歳のクィア(ノンバイナリーなど)を同じ旅行者と見ることはできません。などなど……。(より詳しいデータや解説は、私の研修を受けていただければ、お伝えできると思います)

ジョージア水族館でのオープニングレセプション。写真中央が小泉氏、小泉氏の右はIGLTAのPresident、John Tanzella氏。  IGLTAグローバルコンベンションの最大の特徴は、LGBTQのカルチャーを活かしたネットワークイベントです。初日はジョージア水族館の宴会場を使用し、泳ぐ魚を見ながらの素晴らしいパーティで、米国の超人気番組「ル・ポールのドラァグレース」に出演していたドラァグクイーンのショーもあり、たいへん盛り上がっていました。2日目は、IGLTA財団のパーティが、デルタ航空博物館で開催されました。広い空間には歴史のある航空機が多数飾られており、有名歌手のライブやおいしい料理を堪能し、みなさん大満足な様子でした。最終日は、来年のホストシティであるミラノが、ホテルの宴会場でのクロージング・レセプションでスピーチし、参加者のみなさんは2022年にミラノで再会することを誓い合いました。

デルタ航空博物館で行われたIGLTA財団のパーティーミラノによるクロージングレセプションのスピーチ

 今後の旅行業界の動向は、各国がどれだけ入国規制を緩和していくかによると思いますが、今回の参加者はみなさん常に前を向いてビジネスを考えており、私もたいへん勇気づけられました。

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