「ハイブリッド型MICE」で需要喚起、アフターコロナの誘客へ-福岡市経済観光文化局観光コンベンション部長 中村義治氏

地域の特性を活かし「都市型ワーケーション」を推進
オンラインとリアル、双方への支援で観光産業の回復を目指す

 空港から都心までのアクセスも良好で、数多くの学会や国際会議が開催されてきた福岡市。コロナ禍を受け需要が大幅に落ち込むなか、同市ではオンラインとリアルを併用したハイブリッド型MICEの誘致を進めている。福岡市経済観光文化局で観光コンベンション部長を務める中村義治氏に話を聞いた。

中村氏

-はじめにご自身のご紹介と、観光コンベンション部の役割について教えてください。

中村義治氏(以下敬称略) 私は1994年に入庁し、環境局エネルギー政策課長、経済観光文化局企業誘致課長、環境局循環型社会推進部長などを経て2021年に経済観光文化局観光コンベンション部長に就任しました。現在観光コンベンション部では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている観光・MICE事業者が事業継続していくための経済支援に力を注ぐとともに、感染症終息のフェーズを見据え、国内観光の推進やインバウンドの回復に向けた取り組みを段階的に進めています。

-2019年度と2020年度の観光客数と宿泊客数について教えてえください。

中村 新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年の入込観光客数(推計)は2148万人、うち宿泊者数は978万人です。2020年分は入込観光客数、宿泊者数ともに集計中ですが、2019年に年平均79.6%だった旅館・ホテルの客室稼働率が2020年には年平均34.8%だったことから、感染症の影響により大幅な減となることが見込まれます。

 今後に向けては、福岡市観光振興条例の制定や宿泊税の創設などを契機に、2020年度から3年間の方針を定めた「観光・MICE推進プログラム」において、2022年度の目標として入込観光客数2300万人を掲げています。

-観光産業従事者の雇用環境や経済的支援などの状況はいかがでしょうか。

中村 東京商工リサーチがまとめる九州・沖縄地区の倒産状況(負債1000万円以上)は、2019年度の713件に対し、2020年度は561件と減少していますが、宿泊業に着目すると5件から13件に、飲食業については69件から75件に増加しており、新型コロナウイルス感染症の観光関連の業種への影響がうかがえます。

 このような状況を踏まえ、福岡市ではこれまで「宿泊事業者が取り組む感染症予防策に対する支援」や「新たな生活様式に対応した宿泊施設の多様な利用促進事業」、「宿泊施設の高付加価値化等支援事業」など、宿泊事業者を対象とした支援事業や、飲食事業者を対象とした「休業要請への協力店舗等への家賃支援」、「地域の飲食店を支えるテイクアウト支援」など様々な支援策を実施してきました。

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