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ミレニアル世代の校長が推進する産学連携の実践的職業教育-京都ホテル観光ブライダル専門学校 田中幹人氏

厳しい状況だからこそ企業連携の新しい方法を模索
これからは専門学校生にもマネジメントスキルを

-企業との連携について具体的な内容をお聞かせください。
企業と連携し学生が創り上げる「ブライダルプロジェクト」の1コマ

田中 過去の実績として、まずブライダル学科では企業から課題を頂戴し、学生がグループワークを経て企画運営する模擬披露宴が挙げられます。結婚式場をお借りし、実際の事業所の関係者をゲストとして模擬披露宴へお呼びするものです。

 旅行学科では学生が企画した旅行プランを旅行業界のゲスト有識者にプレゼンし、講評していただく機会を設けています。コロナ前はプレゼンで優勝したグループの企画を、その年の学科の卒業旅行に採用したこともあります。自分たちが企画したプランで卒業旅行へ行けるというわけです。

 ホテル学科では、バーテンダーのカクテルコンペティションを行っています。ホテルで活躍するバーテンダーの方に来ていただいて、作成したカクテルを評価していただく取り組みです。授業ではアルコールは飲めませんので学生はモクテルを作って練習を重ねています。

 現在、ホテル・観光やブライダル業界は苦しい状況に置かれているからこそ、今後は企業連携の新しい方法を模索していきたいと考えています。例えば、コロナの影響で高校生にとって進路選択は難しい状況にあります。そこでブライダル学科では結婚式場と協働し、オンラインでウェディングプランナーの方にお話いただく機会を設けました。ブライダル産業新聞にも掲載いただきましたが、外に出られなくても進路選択のきっかけを作れるように、このような取り組みを行っています。

 また大和学園では、この度観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」に学校法人としては唯一採択されました。今後は大和学園を中心として、地元のホテルや旅館、金融機関、旅行会社、タクシー会社に加え、大手広告会社や大手不動産ディベロッパー等と連携し、京都市内の観光振興に寄与するプロジェクトを立ち上げます。さらにこのプロジェクトに本校の学生を巻き込む予定です。学生が京都観光復活に向けた旅行商品や京都観光の新しいアイデアを提案し、一連の取り組みを教育のアウトカムにつなげます。

 そのほか、京都市内のホテルを1棟貸し切り、学生だけで運営するチャレンジングなプロジェクトも企画予定で、これまでにない発想で職業教育の幅を広げていきます。

 また、今年度より本校では留学生限定の「ホスピタリティビジネス学科」を新設しました。日本語能力試験(JLPT)N3レベルの留学生を対象とした学科で、様々な国・地域から集まった学生が交流し、日本人学生と外国人留学生が相互に良い影響を与えあうキャンパス環境を創出したいと考えています。

-「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」について詳しくお聞かせください。

田中 一言でいうと「京都の食文化を五感で体験できるプロジェクト」を企画しています。具体的には、大和学園の太秦キャンパスに食文化の普及を目的とした「食文化ミュージアム」があるのですが、コロナの影響で現在は開店休業中です。そのため、この機会にデジタル化推進も含めたミュージアムの改修を計画しています。この「食文化ミュージアム」を含めた太秦キャンパスを食文化普及の一大拠点とし、各事業者と連携しながら、京都観光や経済復活に寄与する京都市内のエリアを面で捉えた食文化振興や普及のイベントを仕掛けていこうと考えています。

 そのほか、観光庁プロジェクト以外にも、京都府内のミレニアル世代の食・観光・伝統関連企業の若手経営者と連携したユニークな事業も推進します。さらに、観光とは直接関係ありませんが、特に若い世代に対する生活文化の普及・振興、理解促進、機運醸成につながる事業を効果的に展開すべく文化庁とも連携し、「京都発!アタラシイ生活文化創造プロジェクト~次世代で茶道・華道・食文化の未来を考えよう~」と題したプロジェクトも今秋立ち上げます。コロナ禍を経て、今後も「共創・共生」の視点で様々なチャレンジを継続して若い世代から働きかけていきます。

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