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「送客」から「創客」へ、地域主体の観光街づくりを目指す-「道後御湯」宮﨑光彦氏

  • 2021年9月1日

伝統を継承しつつ常に新しい挑戦を続ける
稼働率を支えるのは「定休日」

-コストセーブの取り組みはされていますか。

宮崎 人件費については、働き方に原則マルチタスクの仕組みを取り入れていることが最大の効率化・コスト削減策です。また、客室はじめほとんどを個別・省エネ設備で構成し、温泉の配湯は休館日には休止するなど、きめ細かな対応をしています。加えてチェックインと同時に客室露天風呂に温泉を給湯できる最新システムを導入し、光熱水費を抑えるだけでなく、お部屋ご到着時に新鮮な温泉に感動いただくことを目指すなど、サービスの質を低下させないようスタッフ一人一人の現場からの声を反映して進めています。

-ポストコロナに向けた取り組みについてお聞かせください。

宮崎 コストパフォーマンスを上げ、他の施設との差別化を図るため、スイートやデラックスタイプには特別に音楽機材を置いたり、客室冷蔵庫の中身や化粧品も質の良いものに変えています。また、リピーターに向けて料理も頻繁に変更し、食材については9割近くに地元産の食材を使うことを徹底しています。顧客管理はもとより社員研修や商品力を強化することで、この価格帯では絶対に負けないようにしていきたいと考えています。

 理想の稼働率は75%。そのためには単価を少しずつ上げていきながら、ハードとともに、料理やスタッフ1人1人のおもてなし向上にどう取り組んでいくかが課題ですね。

-直販、OTA、旅行会社からの予約の比率はいかがでしょうか。

宮崎 道後御湯の直近のデータは、直販が30%、OTAが60%、旅行会社さんからの予約は10%という比率です。一方系列の大型旅館のホテル椿館は、旅行会社さんへの依存が比較的高かったものの、デジタル化進展と販売店縮小によりこの傾向も激変してきており、一刻も早いリアルの繋がりの復活が望まれます。

-今後、OTAや旅行会社とはどのような関係を想定されていますか。

宮崎 どちらのお客様からも支持されるには、自社の商品価値をさらに上げることと、地域の魅力を向上することが求められるでしょう。即時性、可変性の高いOTAでは、タイムリーな商品展開によるイールドマネジメントの強化が必要です。信頼とコンサルティング力のある旅行会社とは、宿泊だけでなく旅そのものの楽しさや質的満足を協働で提供する関係構築が急務です。もちろん、道後御湯でも全館貸し切りニーズが今もあるように、グループ・団体、MICEの利用促進も大いに期待しています。

道後湯帳

 具体的には着地型旅行商品の提案をしています。例えば、JTBさんと旅ホ連愛媛支部が共同でE-Bikeを購入し、瀬戸内しまなみ海道のレンタサイクル特典プランに組み込んだり、今治の会社と連携し自転車を積み込める「サイクルシップ」も造っていただきました。また、四国ならではの「歩きお遍路」を取り入れたチームビルディング研修プランなども設けています。さらに、道後だけでなく県下各地域や異業種とも関わりを深めており、帝人フロンティアさんと「道後湯帳」を共同開発するなどの取り組みも行っています。

  これからのキーワードは、「B2BからD2B」「B2CからD2C」だと考えています。DはDestination、「目的地」として選んでいただくことを目指します。そのためには、更なるブランディング強化に加えて、旅行会社さんやお客様にもっと発信をしていかなければならないと考えています。

 最近はコロナの影響もあり、地域と旅行会社さんとの関わりが減ってきていることが懸念されます。こんな環境下だからこそ、リアルの旅行会社さんは各地に足を運び、施設との関係を再構築する必要があるのではないでしょうか。持っている力や情報、人材を活かしてターゲットを鮮明にし、OTAではフォローしきれない、より細かなニーズに対応すべきではないかと思っています。

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