旅のサブスクに対して旅行会社はどう対応していくのか?-RT Collection 柴田真人氏寄稿

  • 2021年8月18日

 昨年、全日空と住宅のサブスクサービスを展開するADDressが提携し、航空券定額制サービスの実証実験を発表した時も話題になりましたが、今回このサービスの内容を見た時、それを上回る内容であったこと驚き、旅行会社の一歩先を行ってしまったのではと改めて感じました。また、HafHのサブスクサービスでは基本プランで予約ができる宿泊施設はホステルが多かったこともあり、航空会社と提携する場合は勝手ながらLCCと思っていたところ、JALと提携ということで期待を大きく上回ってきました。

 旅行会社が旅行商品を販売する際、単発商品ばかりで3回分の旅行がセットになった旅行商品なんていうものはありません。そのため、旅行会社が同じ旅行者に次回も利用してもらえるかどうかは、どちらかというと次回使える割引券やそういった類のサービスよりも、担当者の対応がとても良かった、色々な要望に対応してくれたなど、担当者ベースの努力によるところが大きくなっています。

 しかし、この移動手段と宿泊施設を掛け合わせた新しい旅のスタイルのサブスクサービスでは、申込みの時点で3回分の旅行予約が発生することが確定しており、言い方を変えると3回分の旅行申込みをしてくれるリピーターを獲得したようなものです。また、旅行先にとってもメリットがあり、受け入れ側の努力によってはサブスクサービスを利用して同じ都市への訪問回数が増え、結果として関係人口を増やすこともできます。

 実証実験の段階ということで、希望日の航空座席の確保が実際できるのかどうかなど課題は出てくると思われますが、旅のサブスクは業界内でもインパクトが大きく、こういったサービスに敏感な20代や30代の旅行者に対しては話題性がとても大きいです。また、今回500名の申し込み枠が即日埋まったことを考えると旅行会社の競合の1つになることは間違いがなく、一方で業界全体として捉えるなら大きな前進だと思います。

 今後、旅行会社がサブスクサービスを通して、旅行者と長期的に関係性を持っていくことは非常に重要になってきます。そして、どういった内容やコンテンツでサブスクサービスを展開していくのかを考えていく必要があります。

 例えば、トリップアドバイザーが開始した定額制会員プログラム「トリップアドバイザープラス」のように、特別価格や客室のアップグレード、ウェルカムドリンクなどの特典を提供していくのか、あるいは旅行申込前にオンラインツアーに無制限にアクセスができて疑似体験をすることができたり、旅行地での送迎が専用車対応になったり、パッケージツアーでもホテルのベッドタイプの確約ができたりと特別な体験から細かいサービスまで含めていくのかなど、旅行者にとっての価値がどこにあるのかを考えていく必要があります。

 このように、旅行会社でも様々な視点でサブスクサービスの内容を考えていくタイミングにきています。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。