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SDGsビジネスマスターから見るSDGsビジネスの現場とは?-RT Collection 柴田真人氏寄稿

バックキャスティング思考

 まず、キボッチャが考える未来の理想の姿というものは「防災教育を通して自ら判断・行動できる社会」です。天災の多い日本では毎年のように台風や地震が発生し、防災に対しての意識を高めていく必要があります。有事の発生の時に各個人が防災教育で学んだことを実践できるように、防災教育をどういった形でどのように行っていくのかがポイントとなります。そこで「廃校」「防災教育」「宿泊施設」というものを掛け合わせ、子供未来創造校という形で「キボッチャ」が作られました。学習ルームやデジタル資料館、シアタールーム、語り部ルーム、室内パークという手法を使って、宿泊ができる体験型の防災教育プログラムを提供しています。

誰一人取り残さない

 防災教育では「自ら判断して行動ができるようになる」をコンセプトにしたプログラムを作り、子供たちへ伝え、そして未来の子供たちへも受け継いでいく内容になっています。また、子供たちだけではなく、親子や学校、自治体、企業など様々な人たちが防災教育を受けることができるように内容をアレンジしながらプログラムを作っています。

地球規模

 さらに、防災教育は国境を超えても、国籍が違っても必要です。例えば、日本在住の外国人コミュニティに対して、あるいは海外に対して、防災教育を軸に日本を超えてビジネス展開をしていくことが可能です。つまり、地球規模のビジネスを構築できる可能性があるということになります。実際にすでにインドネシアやヨーロッパからの旅行者が防災教育を体験するためにキボッチャに訪れたり、宿泊したこともあるそうです。

 これらのポイントをしっかりとおさえて、収益化できる事業にしていくのがSDGsビジネスです。このように「廃校」「防災教育」「宿泊施設」を掛け合わせることで新しい商品やサービスが生まれ、SDGsを軸にして事業展開をしていくことで他にはない価値が生まれます。

 今回、SDGsの取り組みをしているキボッチャに足を運んでみて、自分の中でとても腹落ちしたことがありました。それは代表の三井さんのぶれない意志や価値観です。新しいものを作り出して事業化していく際、ぶれない意志や価値観があってこそだと改めて思いました。

 SDGsビジネスを行う上で「バックキャスティング思考」「誰一人取り残さない」「地球規模」の3つをしっかりと意識することが非常に大切です。そして、企業の商品では企業と顧客の間で行うマーケットインやプロダクトアウトの概念が多くありますが、SDGsビジネスでは「社会課題と顧客の間で発生するニーズ」にアプローチして解決する商品やサービスを作り出すアウトサイドインの考え方が必要となります。

 SDGsの取り組みに興味がある方は是非キボッチャに一度足を運んでみてください。また、社内の管理職研修や新人研修などで利用してみるのもよいでしょう。

 SDGsビジネスを考える際は、「社会課題と顧客の間で発生するニーズ」を探してみましょう。

引用:JTB総合研究所「観光産業におけるSDGsの取り組み推進に向けた組織・企業団体の状況調査」https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2021/06/sdgs-and-tourism/

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。