コロナ下の教育現場、観光産業を目指す学生の今-駿台トラベル&ホテル専門学校 校長 塚原慶一郎氏
産学連携を通じて真に実践力ある学生を育てる
塚原 コロナ前は例年ほぼ前年比100%前後で推移していましたが、2021年度は前年比85%程まで押し下げられている状態です。来年以降は日本国内への渡航制限があることから特に留学生の人数に大きな影響が出ると想定しています。
塚原 修学旅行や家族旅行、知り合いの結婚式など、過去に感銘を受けた経験から強い目的意識を持ってこの業界を目指す学生が多いので、この環境下でも目標は変わりません。一時的にほかの業界に就職しても、いずれはこの業界へ戻ってきたいという学生が多いですね。
今年3月に卒業した学生もコロナ禍の厳しい就職環境ではありましたが、9割が内定をいただきました。なかには旅行会社志望の学生が進路をホテルに変更したというケースもありますが、ほぼ観光サービス業への就職を叶えています。2022年に卒業を迎える在校生についても基本的には志望業界は変えずに就職活動に入っていますが、連携企業の方々からコロナ禍での就職活動を乗り切るには他業界であってもまず新卒での正規雇用を目指し、コロナが収束し観光業の求人が戻ったところで希望職へ転職する選択肢を視野に入れて行動するようアドバイスをいただいており、そのアドバイスを念頭に他分野にも目を向けて内定を取っている学生もいます。
塚原 本校は文部科学省から職業実践専門課程の認可を得て産学連携を行っています。そのなかで年2回ほど観光業に携わる方々との会議の場を持ち、カリキュラムや業界へ送り出した卒業生の実践力などについて議論しています。企業からは、現場で役立つ英語力や航空券の発券システムの資格、グループワークの活用による課題解決能力の養成、ITに関する知識など、求める人材についてリクエストをいただいており、それをカリキュラムに取り入れています。
専門学校の学生は実践能力や職業意識が非常に高く、実習を通して企業の中身を十分理解した上で就職し、業界内で長期間にわたり活躍するという点も企業側に評価していただいています。コロナが今後観光産業にどのような影響をもたらすかは分かりませんが、AIシステムやロボットではなく人間にしかできない仕事とは何かを見極め、それに見合う人材をどのように育成していくかが重要だと考えています。
特に昨今は、新たな課題に直面した時の解決能力が高いことや、さまざまな事案に対してディベートするような場でも意見をしっかり言える人材が求められています。日本人の学生は留学生たちと比べてもその点が弱いので、考えていることを自分の言葉で表現し、新たなものを創造していくことができるという点を重視した教育の必要性を感じています。
塚原 観光業は多くの国民を癒し、楽しませ、さまざまな異空間で未知の体験に遭遇させることができる魅力的な仕事です。今は「不要不急を控えよう」という風潮ですが、私は、旅行・観光とは「不急ではあるかもしれないが人間にとって必要不可欠なもの」と考えています。ぜなら、日常から解放された癒しや喜びや気づきを得るという経験はほかに代え難いものだからです。
アフターコロナの時代、観光産業にもさまざまな変化がもたらされると思います。しかし、多少形態は変わったとしても、日本の一大産業であることは変わりません。だからこそ、新しい発想や新しいシステムを生み出す人材がますます必要となってくるでしょう。日本が誇る観光産業で、次代を担う若者の夢を実現するために、ワクチン接種が速やかに行われ感染が収束し、社会の経済活動も回復し、彼ら彼女らが希望する企業が平常通りの採用活動に戻れることを切に願っています。本校もその産業で活躍できる若者をしっかり育成してまいります。