【コラム】京都観光産業の現状と浮かび上がる課題ーGWと今夏、そしてポストコロナを見据えて

  • 2021年5月28日

行政施策と需要回復の狭間で

 今週は「京都ウィーク」として、京都のホテルや旅行会社の現状と今後の取り組みをインタビュー形式で毎日掲載していくと共に、研究者や大学の先生にも観光に関するご意見や見解をお聞きしましたので、そちらの紹介もしていく予定です。



 今回、皆さんからお聞きした事、現地を見て感じた事は以下の通りです。

●このGW期間中に京都を訪れた観光客の方々は例年に比べ、若年層と一人旅が多く、ステイルームの時間が長い

●高価格帯のハイブランドで、会員プログラムが充実しているホテルは相対的に稼働率が高い

●コロナ前に比べ観光客が減った今「住みやすく」なったと感じている住民の方は多い(特に京都は地下鉄よりバスが便利なので通勤・通学・通院などへの影響が緩和された)

●これまでの京都地場の旅行会社の廃業や倒産は限定的、しかし7月以降は激増の可能性

●観光客数の増加や消費は地域住民の住みやすさや地域の税収増と必ずしも比例しない

●都市には各種インフラや災害時の対応にキャパシティ限度が有り、それを超える受け入れには危険も伴う

●食は重要な観光要素

 詳細は各記事をご覧いただきたいと思いますが、GWの沖縄で感じたこと同様、観光客の方々のコロナ禍中での旅の楽しみ方はかなり洗練され、マイクロツーリズムも定着したように思います。そして、改めて見直してみると、課題としてお聞きした内容が「スマート・モビリティ」「観光地危機管理」「ガストロノミーツーリズム」という旬なワードに置き換わっていくことがわかります。

 京都は言わずもがな、日本を代表する観光地です。一方、2019年には京都市の人口約150万人に対して5000万人もの観光客が押し寄せるという事態になっていました。熱狂に近いインバウンドフィーバーに為す術もなく入域人数ばかりが募り、バックヤード・インフラ体制を整える余裕がなかったのは、何も京都だけではなかったとは思います。

 今回は情勢柄、行政の方々にお話を伺うことは出来なかったのですが、機会があれば図らずもコロナ禍に見舞われ静寂が訪れた中、どのような対応策を準備されていたのか是非勉強させていただきたいと思っています。

 一方、事業者の方からは、悲観・楽観双方の声が聞かれました。「GoToトラベルの年内再開は無いのでは」「雇調金の特例措置が6月末で切れ、今夏の需要が戻らなければもう持たない」と言った声を聞く一方、「ワクチン接種のスピードが上がってきたので、間もなくワクチン接種済みの65歳以上のアクティブシニアが動き出す」「来年は海外旅行へのハードルがまだ高いため、国内旅行へのシフト需要も有り日本人の国内旅行はコロナ前の水準に戻る」「インバウンドの戻りも意外に早いのでは」等々、楽観的な見方をされている方も少なく有りません。

 インタビューをさせていただいた方の中には、読者の皆さんとの情報交換や協業提案歓迎と仰っている方も居られますので、是非コメント等で活発なやり取りをお願いします。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​