コロナ禍こそ宿泊施設は直販強化を-tripla代表取締役CEOの高橋和久氏
AIチャットボットと予約エンジンで宿泊施設をサポート
施設から直接顧客へアプローチ、需要の取り込みを
高橋 ゲストカードは手書きのところがほとんどで、デジタル化している宿泊施設は99%ありません。これをデジタル化し、お客様の情報を積極的に活用して情報発信すべきだと思います。お客様が「良いホテルだった」と思っても、その後のアプローチがないとホテル名を忘れてしまうこともしばしばです。名前を思い出させるような定期的なアクションは必要でしょう。
例えば、期間限定で2000円で素泊まりできる旅館があるとしますが、そういう情報は宿泊者が自分で旅館を検索しないとわかりません。宿泊施設がお客様のデータを管理し、「コロナ禍で危機的状況なので、普段宿泊してくださる方に応援してほしい」というように、積極的にアプローチをしてもらいたいです。
そのためにはまずお客様のことを知り、その上でどうアプローチをするのか考えてほしいと思います。こういう話をすると「分かった、CRMを導入しよう」という反応が返ってくることがありますが、そうではなく、何をしたいか、どうおもてなしをすればいいのかを考えてIT技術を活用してほしいです。
高橋 希望としては、自社サイトでの売上比率が上がればと思っていますが、現実的にはそうはならず、施設のブランド力によって状況は異なると思います。
Amazonではファッション事業部で働いていましたが、ファッション業界は宿泊業界と同じでたくさんのメーカーがあり、各社がECサイトで商品を販売しています。Amazonで販売しているブランドの中には、自社サイトが非常に伸びておりECモールと自社サイトの比率が5対5くらいのブランドもあります。しかし、あまり有名でないメーカーはECサイトに頼っています。
ファッション業界から数年遅れている宿泊業界からすると、ブランドの強い宿泊施設は自社サイトの売上が伸びると思いますが、知名度の低い宿泊施設はOTAと自社サイトのバランスを取りつつ、自社サイトの比率を少しずつ伸ばしていかなければならないでしょう。そうしたところはまず直販率10%をめざし、最終的に50%をめざせばいいかと思います。
高橋 23年には19年と同レベルまで回復すると思います。インバウンドといっても台湾、韓国、中国がそれぞれ全体の約4分の1を占めているので、これらの人々がワクチンを打ち終わるタイミングはそれくらいでしょう。22年は19年比で20%くらいになるのではと思います。
高橋 16年から19年までの4年間はインバウンド効果で毎年売上が伸びており、正直「これほどまでに追い風な状況はない」と思っていましたが、今回のコロナで打ちのめされました。我々も何とか生き残れるように努力しますが、業界内で助け合い、ビジネス、ひいては日本の観光産業を伸ばしていけるように頑張っていきたいです。